仕事で思うように成果が出ない、がんばっているのに周りから評価されない。
働く人にとってこれらは深刻な問題です。しかし、結果を出し、周りから評価されるためにどうするべきか、ということを考えてみても「もっと一生懸命やる」といった漠然とした答えになりがち。
日報コンサルタントの中司祉岐さんは、著書『書くだけで自分が9割変わる』(プレジデント社/刊)で、仕事で結果を出せるようになるための方法として、「仕事中の自分の行動を紙に書き出してみる」ことを勧めています。
このシンプルな方法で、仕事がどのように変わるのか?
中司さんにお話をうかがってみました。
■“手書き”が仕事に与える大きな影響とは?
―中司さんは前著『小さなひらめきが成果に変わる A4マイ日報で「勝ちパターン」仕事術』から一貫して、自分の行動やアイデア、改善点を紙に手書きで書いてみるということを薦めています。この方法のメリットはどんなところにあるのでしょうか。
中司「物事を考える時に、何かに書いて考える人と、頭の中だけで考える人がいると思いますが、頭の中で考えていたことは後で思い出そうと思ってもなかなか思いだせなかったりしますし、書きとめておくにしても、スマートフォン、あるいはワードやエクセルにぼんやりとしたアイデアを書き込んでおいても後でわからなくなることが多いです。
しかし、手書きでメモしておくと、“書く”という行為によって、アイデアが記憶に残りやすくなりますし、あとから振り返った時に、メモした当時の自分の感情まで蘇らせることができるので、それをきっかけにいろいろなことを思い出されるはずです。これはデジタルツールにはない手書きの大きなメリットだと思います」
―本書には、手書きで自分の行動を記録して、うまくいったことは自分の教科書として、うまくいかなかったことはその原因を考えて今後に活かしていこうということが書かれています。これをやることで人はどのように変わっていくのか、ということを中司さんの体験を踏まえて教えていただけますか。
中司「人間は基本的に自分の頭を過信していて、答えは頭の中だけで出せると思っているところがあります。でも、賢い人ほど、実は書いて考えているんです。書くことで自分の考えをより掘り下げられるということを知っているんですね。
頭の中だけで考えている人には、たとえば仕事の場面でも、うまくいったことは“ああ、良かった”、うまくいかなかったことは“悔しい”という感情しか残りません。うまくいかないなら、その原因を考えて改善策を出し、それを自分の中でルール化することで、スキルに変えていくことが大切なのに、それができない。
対して、この本で書いているのは、自分のやったことを書いて、客観視するということです。
営業であれば、契約がとれたのはたまたまうまくいっただけか、自分の営業トークがうまかったのか、そうであればどの部分がうまかったのか、というのを書きながら考えてほしいんです。売れるか売れないかの違いは紙一重です。その違いは、書かないとすぐに記憶から消えてしまうものですが、書くことで自分の中のスキルとして蓄積されていくようになります」
―今おっしゃったようなことは、多くの人が大事だと思いつつ、いざやってみるとなかなかうまくいかなかったりするのではないかと思います。「手書き」を始めてみるにあたってアドバイスがありましたらお願いします。
中司「本の中では“グッドジョブ”“バッドジョブ”と呼んでいるんですけど、まずは“何がうまくいったか”“何がうまくいかなかったか”という2つの視点を持ってほしいですね」
―その2つだけでいいんですか?
中司「そうですね。日々の仕事の中で、その2つを全て書き出していってください。できれば、商談が終わった直後とか、一つ一つの仕事が終わるごとにやってほしいです」
―うまくいかなかったことの原因を考えて改善するというのはよく聞きますけど、うまくいったことを分析することは、なぜかあまりやる人がいませんよね。
中司「うまくいったこともきちんと分析しておかないと、将来指導ができないんですよ。将来、上司やリーダーになりたいなら、“グッドジョブ”の事例を集めておいた方がいいと思います」
(後編につづく)
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