ビジネスパーソンならば誰もが知っている“マーケティング”という言葉ですが、新人や若手にとっては、「なんとなく響きがカッコイイ」とか「何をしているのか分からないけれど花形の部署」といった漠然なイメージがあるのではないでしょうか。
そんな“マーケティング”の本質をストーリー形式で学ぶことができるのが『マーケティングってそういうことだったの(・∀・)!?』(豊田裕貴/著、あさ出版/刊)という本。
「(・∀・)」という顔文字がタイトルについているという、ビジネス書としては前代未聞の本書では、マーケティング部に異動になった新人OL・花森さくらとともに、マーケティングとは何をするのかを具体的な事例を交えて学んでいきます。豊富なイラストがアクセントとなり、堅苦しさはゼロ。マーケティングのことを何も知らなくても、楽しみながら勉強できます。
この記事では、マーケティングの本質を知ることができるとある事例をご紹介します。
1万円の掃除機と10万円の掃除機、あなたならどちらの掃除機を買いますか? 同じ掃除機ですから、普通に考えるならば、まず「安さ」に目が行くはずです。
多くの人は商品を比較するとき、まずは価格を参考にします。安ければ売れる、そう考えるでしょう。でも、10万円の掃除機を大ヒットさせたメーカーがあるのです。
■「高性能だから売れた」のではない
10万円の掃除機を市場に投入したのはダイソンです。ダイソンはイギリスの家電メーカーで、サイクロン方式という新しい技術を導入した掃除機を開発しました。つまり、他の掃除機に比べ高性能なのです。
ただ、それは売れたという理由にはなりません。また、消費者のニーズを理解し、それに対応出来たという答えも正しいとはいえないといいます。では、この10万円の掃除機が売れたのはどうしてなのでしょうか。
■一番“差別化”できるところを探した
「同じものなら安いほうを選ぶ」
「同じようなものなら安いほうを選ぶ」
この2つは一緒のように思えますが、重要なのは「同じもの」だけでなく「同じようもの」というところ。同じものならば安い方で買うのは当たり前ですが、まったく同じでなくても「だいたい一緒だ」と思ってしまえば、同じグループとしてひとくくりに考えるのです。
そこでダイソンは、他の商品とは決定的に違う部分を消費者に打ち出します。つまり、「差別化」を徹底的に行ったのです。
「吸引力が落ちない、ただひとつの掃除機」
シンプルですが、とても覚えやすいコピーです。サイクロン方式はそれまでの掃除機で主流だった紙フィルターが使われておらず、目詰まりが起きないため、一定の吸引力が保たれます。ダイソンはその落ちない吸引力に注目し、PRを行ったのです。
■消費者に「欲しい」と思わせれば成功
掃除機は吸引力が落ちてくることが当たり前だと思っていた消費者にとっては、まさに目から鱗でした。さらにある欠点に気づくと、それが気になって仕方なくなるのが二元というもの。そこで「10万円の掃除機が欲しい」となるのです。
いくら高性能であっても、消費者が「欲しい」と思わなければ意味はありません。
売れる可能性のあるものを開発し、それを売れるようにする。それがマーケティングの役割といえます。
本書ではこのダイソンをはじめ、マクドナルドや富士フィルム、コカ・コーラとペプシ・コーラなど豊富に揃えているのですが、少しに気になることが。
それは、本書の表紙です。カワイイ女の子のイラストが目を引き、タイトルには「(・∀・)」という顔文字がついています。マーケティングについて書かれている本がたくさんある中で、このイラストやタイトルはまさにインパクトがあります。
そのインパクトに、表紙につられて本を手に取る人もいるはず。ということは、これも「差別化」を計ったマーケティングの一部なのでしょうか…?
マーケティングを学びたい!と思う若手にはピッタリな一冊です。
(新刊JP編集部)
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