職場でも学校でも、今の主流は“ホメて伸ばす”こと。
しかし、ホメるだけでは人は育たないということを、現場の実感として持っている管理者や指導者は多いのではないでしょうか。
特に会社では、部下を指導している上司の立場として、部下を叱らなければならない場面がどうしても出てきてしまうのですが、部下のやる気を削がない形で「叱る」のは、「ホメる」よりずっと難しいことです。
では、部下を成長させ、厳しく叱っても部下に愛される上司の叱り方とは、一体どのようなものなのか。
『ビシッと言っても部下がついてくるできる上司の叱り方』(PHPエディターズ・グループ/刊、PHP研究所/発売)の著者、嶋田有孝さんにお話を伺ってみました。
―『ビシッと言っても部下がついてくるできる上司の叱り方』についてお話を伺えればと思います。タイトルのように「叱り方」がテーマになっていますが、やはりホメるだけでは部下の成長は望めないのでしょうか。
嶋田「私は、ほめるだけで部下を育てることはできないと思っています。
「ほめること」と「叱ること」は、どちらも上司が部下の仕事ぶりを見つめ、フィードバックすることです。「どちらか一方だけを選んで行う」という性質のものではありません。それは、テストの採点に例えるとよく分かると思います。
採点をするとき、「○だけをつけて、×をつけない」というのは、できないでしょう。それと同じです。「ほめること」と「叱ること」は、表裏一体なのです。「ほめると部下は喜び、叱ると嫌がる」「ほめると意欲を高め、叱ると意欲を失う」という考え方は、正しくありません。
部下を勇気づけ、意欲を高める叱り方は、いくらでもあります。
叱るという行為は、あるべき姿と現状のギャップを確認して、それを伝え、改善させることです。言わば、部下への改善提案であり、成長のためのプレゼンテーションです。それは、ただほめ続けるよりも、はるかに効果的であり、部下の成長に直結するのです」
―部下を叱れない上司の考え方として、どのようなものがあげられますか?
嶋田「管理職になりたての頃、私は「叱れない上司」でした。自分自身がそうだったから、よくわかるのですが、部下を叱れない上司は、次の三つが不足しているのです。
一つ目は、理解の不足です。
「叱ることは相手を傷つける行為だ」と勘違いして、相手の成長のきっかけとなることを理解していない。だから、叱れないのです。
二つ目は、覚悟の不足です。
叱るためには、勇気が要ります。「自分は嫌われてもいい」と覚悟を決めないと、叱ることはできません。
三つ目は、知識の不足です。
叱り方には、いくつかのポイントとコツがあります。知識もなく、我流で叱っても的確な叱り方はできず、うまくいきません。
逆に言うと、叱ることの本質を理解して、覚悟を決め、叱り方のポイントを学べば、誰でも必ずうまく叱れるようになります。それらを体系的に学ぶ事が、叱れるようになるための近道なのです」
―部下がやってしまったことに対して、つい感情的に怒ってしまう上司もいます。こういった、頭に血が上ってしまうタイプの上司は、どのようなことを心がけて部下の指導にあたるべきですか?
嶋田「すぐに感情的にならないために、大切な心がけがあります。それは、「必ずできるはずだ」という前提で部下を見ないことです。
例えば、プロ野球の監督は、チャンスに三振した選手を怒鳴るでしょうか?内心少し腹を立てるかもしれませんが、感情的になって「なぜ三振したんだ」などと怒鳴りつけることはないはずです。なぜなら、その選手の打率がわかっているからです。
「彼の打率は二割五分だ。打てない確率の方が高い」と事前に理解している。過剰な期待をしていないから、三振しても「ドンマイ」と励ますことができるのです。
これは、職場においても同じです。
部下の力を正しく見つめましょう。「時にはできないこともある」と思って部下と接すれば、感情が爆発することは、激減するのです」
(後編に続く)
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