SNSやツイッターが定着し、誰もが気軽に自分の言いたいことを全世界に発信できるようになりましたが、それでも少しつぶやくのにはばかってしまう話題があります。政治経済にまつわる社会問題や、宗教についての意見、性や歴史認識問題などがそれです。
その背景の一つには、私たちの中にできるだけ議論や討論を避けたいという思いがあるからではないでしょうか。
よく日本人は討論をするのが下手だと言われます。そのためか自分の意見を高らかに主張する人はそんなに多くいません。そんな中で注目を集めるのが、自分の意見をストレートに言える人です。
エジプト人タレントとして日本で活躍しているフィフィさんもその一人。日本人がなかなか言いたくても言えない言葉をツイッター(@FIFI_Egypt)で次々と発信し、「フィフィ姉さん頑張って!」「どんどん言っちゃって!」という応援リプライをもらったりしています。中には膨大な数のリツイートをされるつぶやきもあります。
そんなフィフィさんは、初の著書『おかしいことを「おかしい」と言えない日本という社会へ』(祥伝社/刊)の中で、ツイート時の注意点は、あくまで問題提起のみを心がけることだと述べています。
フィフィさんの発言はよくネットニュースで取り上げられて話題になりますが、それらは具体的に名指しで批判しないようにつぶやかれています。特定の個人や一企業の批判に終始しては議論が広がりません。フォロワーの人たちがそのつぶやきを読んで何の問題について言及しているかを連想できるように表現しているのです。
そのために必要なのがメディアリテラシーです。これを使って発言の真意をくみ取ることが、このSNS時代に必要なのです。
また、言いたいことを自由に表現できる環境にありながら、なかなか言わない日本人に対して、もっと匿名の持つ力を活用すべきだと主張します。
タレントであるフィフィさんは、自分の身の上を明かした上でつぶやかざるを得ません。それはつまり、「いつでも簡単に口をふさがれてしまう」状態にあるということ。マスメディアがフィフィさんの発言を問題だと思えば、仕事を奪うこともできてしまうのです。
しかし匿名の力は、しらみつぶしにしたくてもできません。おかしいと思うことに声をあげて、ツイートを一つでも多く積み上げていくことが、大きな力になります。その力が集まって起こったのが、2010年のジャスミン革命に始まる「アラブの春」。本の執筆後に新たな局面を迎えているアラブ情勢ですが、国民一人ひとりの声が重なれば、国を変えることが可能だと、フィフィさんは言います。
本書では在日外国人への生活保護や、原発の議論、セックスレス、愛国心など、物議を醸しやすいトピックスに対してフィフィさんは次々と斬り込んでいきます。
フィフィさんは2歳のときに日本に移住し、その後、大学時まで日本の公立学校に通学していました。そういうバックグラウンドがあることから、この国の文化や日本人の特徴を熟知しており、「おかしい!」と思うことには、エジプト人としての視点で客観的に指摘しています。
そのため、読み進めていくと、頭ごなしに「日本はおかしい!」と言われているのではなく、「フィフィさんは日本人の気持ちを代弁している」と感じることがあるはず。そして、自分たちがこうした問題に対して議論を重ねていかないといけないと思わされます。
日本人が言いたくても言えない言葉がつまった、痛快な一冊です。
(新刊JP編集部)
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