年収がなかなか増えない昨今、脱サラをして、会社員時代の知識を生かした講師やコンサルタントに転身したいと考えているビジネスパーソンは少なからずいるはず。しかし、特定の資格を持たなくてもなれる講師業や相談業には、ライバルがひしめきあっている上に、講師になれれば必ず儲けられるかというと、全くそうではないのも事実だろう。
そんなときは少し目線をズラして考えてみよう。
『「学び」を「仕組み」に変える新・家元制度』(前田出/著、アチーブメント出版/刊)では、講師を育成する「新・家元制度」を提唱し、新しいビジネスモデルを読者に提案している。
■「新・家元制度」とは?
「家元制度」という言葉を聞いたことがあるはずだ。これは、日本の伝統的な習い事に存在する制度で、家元が自らの流儀を体系化して弟子たちに伝え、その技能に適した免状や資格を与えるというもの。能力がある弟子には、さらに弟子がつき、流派全体の組織がどんどん広がっていく。
前田氏が、この制度を応用して作り上げたのが「新・家元制度」だ。
これは同じ分野の講座を取り仕切る任意団体(協会)を立ち上げて、講師の育成を行い、最終的にある程度の技能を習得できた人に、認定講師の資格を与え、各所で講師として活躍してもらうという制度だ。競争に巻き込まれることなく業界No1のポジションになることができ、初期コストも少なく抑えられ、集客に追われることもないという。
■「新・家元制度」でどうやって儲ける?
ビジネスモデルとしては、まず協会側は受講生から受講料(認定料)ももらう、というものがある。前田氏が立ち上げたビーズスキル認定講師養成講座は、受講料5万5千円(別途認定料3万円)ながら、1年間で5000件もの問い合わせ、そして2000人の受講者が集まったという。
しかし、そこまで辿りつくためには、クリアしなければいけないものがいくつかある。代表的なものには以下のようなものがあげられる。
・協会や資格そのものの信頼性(権威性)
・協会や資格そのもののブランド力
・認定講師になったあとにどれだけ稼げるのか
前田氏は「好きを仕事にしよう!」というコンセプトを打ち出し、「楽習フォーラム」という任意団体を立ち上げ、公益財団法人からのお墨付きをもらって権威性を高め、雑誌メディアと提携し、イベントを開催。さらに、認定講師になった人たちの活躍の場を設けたほか、受講料以外にも売り上げが上がる仕組み作りをして、収益化を実現した。
本書で前田氏が提唱している「協会ビジネス」は、これまで体系化されなかった新しいビジネスモデルだ。顧客が顧客を生むという点は、ネットワークビジネスと類似する部分だが、このビジネスは公益性を重視しており、理念的な側面が強く求められるということを指摘しておきたい。
「教える人を育てる」ことは教育業界において必要不可欠なことだが、講師業においても、同じく大事なことであるはず。家元と同様に、その資格を認定する「協会」はその業界において大きな権威を持つ。つまり、「協会」を立ち上げた人が業界ナンバー1の位置になれるのだ。「新・家元制度」は、今後の講師業や相談業のビジネスを大きく変えていくはずだ。
(新刊JP編集部)
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