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「街場の共同体論」 内田樹著

  本書のテーマである「共同体」は、今や風前の灯だ。家庭では父親の権威が没落し、学校では学級崩壊やいじめに加え、モンスター親の攻勢にさらされる。隣人の素性はわからないし、就職難の若者たちは不安定な未来しか描けない。格差だって厳然と存在する。
 いわゆる「人と人との結びつき」が、音を立てて崩壊してきたわけだが、本書はその原因をクリアカットに、かつ残酷に描き出す。
 それは家庭や学校、地域社会までが、「バスに乗り遅れるな」とばかり、市場主義モデルを導入し、効率や利益を最優先に求めた結果なのだ。著者の絵解きがあまりに説得力に満ちていて、逆に暗たんたる気持ちになる。
 しかし、「人との結びつき」を再生させる方策が、最後に提示される。それが「師弟という生き方」だった。日本の現状に義憤に駆られる人こそ、最終章をぜひ読んでもらいたい。目からウロコがぽろぽろ落ちることだろう。

書名:街場の共同体論
著者:内田樹
発行:潮出版社
定価:1200円+税

夕刊フジ

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