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「われに明治の父ありき」邑井操著、川村真二編

 「明治の男」はかくも凛々しく強かったのか。イマドキの「草食系」男子に読ませたい。
 東京・神田で米屋を営む川村増太郎(著者の父)は明治9年生まれの江戸っ子。侠気があって胆力があり、そして子煩悩。口癖は「男はケンカに負けるな」。商売をやっていると、よくヤクザもんがカネをせびりにやって来る。だが、増太郎は一歩も引かず、怒鳴りつけ、逆にヤクザを心酔させてしまう。そして息子のこう教えるのだ。「人生において呑まねばならぬものが2つある。ひとつは人を呑む気性、もうひとつは煮え湯を飲む経験だ」と。
 やがて、息子は戦争に取られ大陸に渡る。両親に宛てて毎日のように手紙を書き、両親も返信をくれる。その数、実に1年あまりで229通。病気で亡くなった母の死をあえて知らせなかった父の手紙に、母の署名がなかったことに気づく息子。そして「僕も日本男児です」と気丈に返事をしたためるのだ。
 父子の情愛が、戦前までの東京・下町の風情とともに見事に描かれる。


書名:われに明治の父ありき
著者:邑井操著、川村真二編
出版社:日本経済新聞出版社
定価:1785円

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