読むべき本、見逃していない?

小論文は頭のよさをアピールするゲーム

  • 書名 「頭がいい」の正体は読解力
  • 監修・編集・著者名樋口裕一 著
  • 出版社名幻冬舎
  • 出版年月日2019年11月30日
  • 定価本体780円+税
  • 判型・ページ数新書判・194ページ
  • ISBN9784344985773

 世界の15歳を対象にした学習到達度調査(PISA)で、日本は2018年の「読解力」の平均点が落ち、順位も前回の8位から15位に下がったことが、2019年12月3日、経済協力開発機構(OECD)から公表された。今後、「読解力」の向上が教育界の大きな課題として浮上しそうだ。そんな折ぴったりの本が出た。

 本書『「頭がいい」の正体は読解力』(幻冬舎新書)の著者、樋口裕一さんは、「小論文」界にこの人あり、と知られた有名人。多摩大学名誉教授、東進ハイスクール講師のかたわら、通信添削による作文・小論文の専門塾「白藍塾」塾長をつとめる。小論文のノウハウを応用した『頭がいい人、悪い人の話し方』(PHP新書)は250万部を超えるベストセラーとなった。

MARCH、関関同立レベルなら誤りなく新聞、教科書を読める

 樋口さんは大学受験小論文の指導をしている。新聞記事や教科書をほぼ誤りなく理解して読める高校生は関東ではMARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)、関西で関関同立(関西学院、関西、同志社、立命館)に合格できるレベルの生徒たちだという。「そのような難関校に届かない生徒の大半は、易しい文章であってもしばしば読み取れないことがあると考えて間違いない」と書いている。

 生徒や学生だけではない。日本人全体の読解力が落ちている、と指摘。読書量の決定的な不足が原因としている。だが、読書が当たり前の行為でなくなった今、読書から始めるのでは遅い。効率的な方法として小論文を書くことを勧める。実際に言葉を使うことで、結果的に読解力もつくという。

「おいしかったです」はダメ

 本書では、語彙力、文章力、読解力の3ステップで実際に問題を解きながら鍛えてゆく。

 まず、語彙力では「言い換え力」。人は言葉によって人の能力や人柄を読み取るからだ。こんな問題から始まる。

 問題1 敬体を常体に、常体を敬体に改めてください。ただし、「終止形+です」の形は避けてください。(→答え)
 ○これからも現在の状況が続くのでしょうか。→これからも現在の状況が続くのだろうか。
 ○その店のまかない飯はおいしかった。→その店のまかない飯はおいしいと思いました。/その店のまかない飯をおいしくいただきました。/その店でおいしいまかない飯を食べました。

 「終止形+です」を使わないようにという指示がポイントだ、と解説している。昭和中期までは文法的に誤りとされてきたが、今は多くの人が使うので許容されている。だが、「楽しかったです」とか、あまりレベルが高くない、「子どもじみた文体」になってしまうと警告する。

 評者も作文・小論文の添削指導をしたことがあるが、まったく同感だ。高校生のほとんどが、この「楽しかったです」パターンに陥っている。「~と思いました」などとするのが常道だ。

 樋口さんは「『おいしかったです』と書くのと、『おいしくいただきました』と書くのでは、知的レベルの差が感じられるだろう。これを意識して文章を書くと、レベルが高まる」としている。

小論文の「樋口式四部構成」

 いよいよ小論文を書く「第3章 文章力を鍛える」では、3つの基本形を紹介、中でも300字以上を書くときの「樋口式四部構成」をじっくり解説している。

 これは、問題提起、意見提示、展開、結論から構成するもので、樋口さんが35年ほど前に開発したのが最初だという。「イエスかノーかをはっきりさせるのが小論文」であり、そのために「3WHAT3W1H」を考えろ、と書いている。

 3WHATとは、「それは何か(定義)」「何が起こっているか(現象)」「何がその結果起こるか(結果)」。3Wとは、WHY(理由、根拠)、WHEN(いつからそうなのか=歴史的状況)、WHERE(どこでそうなのか=地理的状況)、1HはHOW(どうやればいいのか=対策)。

 最後の「第4章 読解力を鍛える」では、第3章で示した四部構成の型を意識しながら、「3WHAT3W1H」を検証すればいいと書いている。

 読解訓練の最後の問題は、2016年度・慶應義塾大学経済学部の小論文の入試問題に出たマイケル・サンデル『公共哲学 政治における道徳を考える』から出題している。本書で段階を追って読解力を鍛えれば、決して難しい問題ではなくなる。

 評者は二十数年前に「白藍塾」に樋口さんを訪ね、取材したことがある。論理的であり、かつ情熱的な語り口に魅了された記憶がある。それこそ「頭がいい」人だと思った。

 評論家の佐藤優氏は、『文藝春秋オピニオン 2019年の論点100』(文藝春秋)に収録された樋口さんの論考について、こう書いている。

「〈小論文とは頭のよさをアピールするゲームだと考えていい。だから、本来は課題とストレートにつながっていない根拠であっても、それをうまくつなげることで、独創的な論を展開できれば、大きなアピールになります。すると、受験生としては、すべての問題に対応できるようにあらゆる知識を詰め込む、といったことをしなくともよいことになる。自分の得意なネタをできるだけ広い分野で十個くらい持てば、それらを使って何とか合格できる答案にたどりつくことができます〉という氏の指摘は、入社試験や社内の昇任試験の準備をする際にも有益だ。このムックは究極の実用書でもある」(「週刊ダイヤモンド」2018年11月24日号)

 具体的な活用法を樋口さんは披露しているので、『論点100』2020年版もすでに出ているが、受験生は2019年版を先に読んでみたらいいだろう。

(一部追記あり)

 

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