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古代の「スーパーマン」を訪ね歩く

  • 書名 役行者霊蹟札所めぐり
  • 監修・編集・著者名役行者霊蹟札所会 編、春野草結 写真
  • 出版社名朱鷺書房
  • 出版年月日2019年10月 2日
  • 定価本体1500円+税
  • 判型・ページ数B6判・240ページ
  • ISBN9784886023551

 各地の霊場を順に訪ねる――四国八十八か所めぐりが有名だ。同じような聖蹟めぐりは各地にいろいろある。本書『役行者霊蹟札所めぐり』(朱鷺書房)は役行者(えんのぎょうじゃ)ゆかりの場所にちなんだもの。関西の36か所をめぐる。

699年に伊豆に流される

 役行者という名前は時々見かける。どんな人物なのか。実像はベールに包まれている。634年に現在の奈良県御所市で生まれたという。日本の修験道の開祖とされる。本書の巻末で龍谷ミュージアム副館長の石川知彦さんが「修験道の成り立ちと役行者」について書いている。

 それによると、修験道とは、日本古来の山岳信仰をベースに、外来の仏教や道教の影響を受けて平安時代に体系化された宗教。山中での修行を通して超自然の力(験力)を獲得し、その力で呪術的な活動を行うのが修験者だという。現在は仏教や神道の一派として生き続けている。

 役行者は、そもそも役小角(えんのおづぬ、またはおづの)という名前だった。史料は乏しいが、『続日本紀』の文武天皇三年(699年)の記述に、実在の人物として登場する。

 「役君(えんのきみ)小角を伊豆の嶋に配流した。初め小角は葛城山に住む呪術者として知られていたが、弟子の外従五位下韓国連広足(げじゅごいのげからくにのむらじひろたり)はその呪力をねたみ、妖しい言葉で人々を惑わしていると讒言したので、遠流に処した。世間では、小角は鬼神を使役するのが得意で、水を汲ませ薪を採らせ、命令に従わない場合には呪縛したという」

伝説的な存在に

 役行者は、九世紀前半までに成立したとされる仏教説話集『日本霊異記』にも登場する。伊豆に配流後の話が出ている。昼間は島にとどまっていたが、夜は富士の高嶺に飛んで修行を積み、701年に許されてからは仙人になって空に飛び去ったという。まるでスーパーマンだ。その後、新羅国で法華経を講じていた一人の法師が、そこで役行者に出会ったという。さらに平安時代の史料では、『本朝神仙伝』『今昔物語集』『扶桑略記』『水鏡』にも略伝が載り、しだいに伝説的な存在になっていく。

 本書は「役行者霊蹟札所会」の編集。平成13年に役行者一千三百年大遠忌を機縁に生まれた新規の霊場会だ。札所は近畿一円に展開する役行者有縁36か所。修験三本山の金峯山寺、聖護院、醍醐寺など32の修験道古刹に、根来寺など4寺を加えている。本書でそれぞれの札所と役行者とのゆかりなどが写真付きで丁寧に解説されている。11のコースに分けた札所めぐりもリスト化されている。「行者」の札所ということもあり、多少脚力が必要なコースもある。役行者が修行や開山したと伝わる霊山は全国に多数ある。本書の36寺院以外にも枚挙にいとまがないという。

 「小角は鬼神を使役するのが得意」という役行者の能力について、解説の石川さんは、この鬼神とは「当時の律令国家の権力が及ばない山中を、生活の拠点としていた『山の民』」と推測している。7世紀後半、倭国は日本に国号を変え、中央集権国家へと旧ピッチで整備されていったが、役行者を通して、そこから漏れていた人々の息遣いもうかがえる。

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