本書『誰も知らなかったラーメン店投資家になって成功する方法』(合同フォレスト)は、ラーメンを作らずラーメン店オーナーになって稼ぐ方法を指南する本だ。ラーメン店の経営について、いろいろ教えてくれる。
著者の藏本猛Jrさんは、1969年生まれ。父親のゴルフ場経営を引き継ぎ、負債を帳消しにした後、10年間の社長生活を終える。ゴルフ場で売れ行きのよかったラーメンに注目。ラーメン店経営を経て、2014年からラーメンプロデューサーとしての活動を開始、これまでに400店以上をプロデュースしている。
だから本書は、おいしいラーメンを作るための本でもなく、はやるラーメン店を作る本でもない。ラーメン店に「投資」してオーナーになり、報酬を得るための本だ。
その詳細は本書を読んでもらうことにして、ラーメン大好きと言われる日本人。へーと思うようなことが明かされているので、いくつか紹介しよう。
ラーメン店は1日何杯売れば儲かるか? という疑問に対し、黒字と赤字の分岐点は60~70杯と答えている。月に1席で20万円売り上げれば繁盛していると言われるという。10席ある店なら200万円の売上になる。
テレビで紹介されるラーメン店は、素材にこだわり、手間をかけてスープを作る様子が紹介される。これに対し、藏本さんがプロデュースする店は「工場系」と呼ばれ、スープや麺を工場で作っている。ラーメンオタクからは「邪道」と批判されたが、いつも味が安定しているメリットがある。ある人気店が工場方式を採用すると、「工場系」批判は止った、と書いている。味を一定に保つことは非常に難しいようだ。
ラーメン店は月に300店も全国で開店しているそうだ。麺とスープと具材があれば作れるため、原価率や利益率を読みやすい。原価率を30%以内に抑えることで、かなり利益が出る業種なのだ。しかも回転率が高い。
藏本さんは「ラーメン店はうまいだけでははやらない」という。立地条件の良さ、店舗の作りや内装デザインなど、味以外の要素のほかに接客態度も重要だという。突然、消える店が少なくないのもラーメン店だ。
本書はラーメン店への投資を呼びかける本だ。自分でラーメンを作らずとも、憧れのラーメン店の味を再現できないだろうか、という質問に対し、ほぼ同等の味を再現できる、と答えている。
藏本さんとメーカーの担当者がその店に食べに行くと、何が入っているかがだいたい分かり、味の要素を分析。メーカーで同じ味になるよう調合するという。
さらに驚いたのは、1種類のスープに対し、複数の「返し」を使い分けることで何十種類ものスープを瞬時に作り出せるというのだ。
何か、ラーメンに対する幻想がはがれたような気がする。
そんなに簡単に作れるならば、ラーメンの海外人気に乗って、海外進出すればと考えるが、藏本さん自らは海外進出しない。国内のメーカーで作ったスープを海外に持ち込めないからだ。アメリカや中国は輸出規制により持ち込めない。スープの材料に豚が使われているためだ。現地のメーカーにレシピを渡して作ってもらうしかない。
藏本さんの周辺でも海外に進出したラーメン店はたくさんあるが、ほとんど失敗しているそうだ。しかし、日本では800円前後のラーメンが欧米では3000円近くに化ける、おいしい商売だ。やり方次第では、まだまだ海外で日本のラーメンは伸びる、と見ている。
BOOKウォッチでは、ラーメン関連として、『全国「駅ラーメン」探訪』(交通新聞社)、『チキンラーメンの女房』(中央公論新社)、『ラーメンの歴史学』(明石書店)を紹介済みだ。
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