痛みを感じて病院を受診したものの、原因がハッキリせず、痛みは今も続いている...。そんなもやもやした思いを経験したことのある人は多いだろう。日本整形外科学会によると、全国に腰痛持ちは約3000万人いて、その約85パーセントが原因不明という。
本書『あなたの腰痛が治らないのは治し方を間違えているから』(アスコム)は、原因不明のまま慢性的に腰痛を抱え、「持病だから...」と諦めている人のための一冊。巷によくある「○○すれば腰痛が治る」といった類の本とは異なり、本書の目的は「腰痛の原因を突き止めること」と明言している。「決して諦めてはいけません。正しい原因さえわかれば、腰痛は治すことができます」と繰り返し訴えている。
著者の日本腰痛研究開発機構は2018年に設立され、「日本から腰痛で悩む人を0にする」ことを目標に腰痛対策の研究・商品開発を行っている。本書のタイトルにもなっている「腰痛が治らないのは治し方を間違えているだけ」のメッセージは、機構の代表を務める高橋諒さんが、どれだけ医者に相談しても解消できなかった腰痛がマットレスを変えただけで消えたという実体験に基づいている。
類書にない本書の強みは、腰痛の専門家5人が監修者であり、それぞれの専門分野から腰痛の原因を解き明かしていること。目次を眺めただけで、自分の腰痛の原因がどこかに当てはまるのではないかと希望が湧いてくる。
第1章 腰痛とサヨナラするための5つの大前提
第2章 整形外科医に聞く! 悪い「生活習慣」が腰を蝕む 秋田護先生
第3章 トレーナーに聞く! 「硬い足首」が腰痛のもと? 新井康希先生
第4章 理学療法士に聞く! 痛みの「理解」で痛みを軽くする 塩多雅矢先生
第5章 痛み専門医に聞く! 「脳の不調」が痛みを生み出す 河合隆志先生
第6章 呼吸器内科医に聞く! 睡眠環境で腰は良くも悪くもなる 宮崎雅樹先生
第7章 実践! 「腰痛ノート」で痛みにサヨナラする
※巻頭に「腰痛原因チェックリスト」、巻末に「書くだけで腰痛とサヨナラできる『腰痛ノート』」がついている
専門家による文章は、噛み砕かれていてわかりやすい。また、大きめの文字、広めの行間、太字とアンダーラインでポイントとなる部分を目立たせるなど、読み手の理解を深めるための工夫が凝らされている。
本書は前提として、「最初に整形外科の診断を受けることは絶対に必要」としている。例えば、骨折や椎間板ヘルニアなど、医学的に原因がわかる場合は「正しく医者の診断を受けて、しっかりと治療しなければ」と念を押す。
その上で、何度も医者に通い、あらゆる治療法を試してきた人に向けて、以下の順に腰痛の原因を探っていく。
骨折や病気による腰痛かどうか確認(これが前提)
生活習慣による身体的な原因がないか(第2章)
腰以外の体の硬さによる身体的な原因がないか(第3章)
「痛い」と思い込む心の問題が原因ではないか(第4章)
痛みを過敏に感じる脳の不調が原因ではないか(第5章)
無意識の睡眠時に腰を痛めていないか(第6章)
中でも、第4章、第5章の「心」や「脳」に腰痛の原因が潜んでいるのでは? という観点は意外だった。
・ネガティブ思考が慢性化のもと(第4章)
最初はケガなどがきっかけで生じた痛みだとしても、痛みによって考え方がネガティブになり、ケガが治っても痛みがとれず慢性痛になる。
・慢性腰痛は「脳の不調」に原因がある(第5章)
「脳の不調」(脳の機能不全や脳の勘違い)が痛みの原因である可能性がある。
本書は、原因を突き止めることを目的としつつ、各章に「慢性腰痛の原因」に加えて「腰痛対策」も書かれている。
・心の腰痛対策
痛みをプラスに捉える、ストレッチで痛みを軽減しながら心の問題を取り除く
・脳の腰痛対策
怖がらずに少しずつ刺激を与えていく、認知行動療法で不安や怒りを解消する、ネガティブな「決めつけ」をポジティブな考えに変える
腰痛は原因も治し方も多様であることがわかる。長年腰痛に悩まされ、痛みを当たり前に感じている人も、真の原因を突き止め、最適な対策が見つかり、停滞した現状から前進できるだろう。
本欄では、『そんなことをしていたらあなたの腰痛なおりません!』(南雲堂)なども紹介済みだ。
当サイトご覧の皆様!
おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!
広告掲載をお考えの皆様!
BOOKウォッチで
「ホン」「モノ」「コト」の
PRしてみませんか?