発行から1年を待たずに6万部を超えた料理のレシピ本がある。時短をコンセプトにした作品だ。タイトルは『作りおき&帰って10分おかず336』(新星出版社)。この3月には第9刷が出来上がったという。
時間の余裕があるときに作りおきできるメニューや、平日に帰ってから10分以内でできる料理を写真とともに紹介している。しかし、本書は単に見た目がきれいな本ではない。
本書の構成は食材別に書かれており、1食材で見開きの構成。左ページに作りおきレシピ、右ページに帰ってから作る時短レシピが紹介されている。そして、面白いのは、左右だけでなく上下の工夫もされていること。
左上 「作りおき」×「かんたん」レシピ。
左下 「作りおき」×「冷凍にぴったり」レシピ。
右上 「帰ってから作る(時短)」×「フライパン」で作るレシピ。
右下 「帰ってから作る(時短)」×「レンチン」で作るレシピ。
食材によっては、「超スピード」や「ボリューム」というカテゴリもある。
上の記事中写真の例は、食材は「鶏むね肉」で、"「作りおき」×「かんたん」"レシピでは鶏肉とにんじんのしょうがマリネ、"「帰ってから作る(時短)」×「フライパン」"レシピでは鶏肉とアスパラのオイマヨ炒めを紹介している。
評者も家庭料理をするが、この構成の工夫はメニューに悩むときほどありがたい。個人的には、「鶏ひき肉」のページに出ていた時短料理で、フライパンで作れるひき肉と小松菜のとろみ炒めは、さっそく帰宅したら作ってみようと思った。同じページの、レンチンで作るひき肉で親子丼もおいしそう。
作り方の解説は、いたってシンプル。包丁の使い方などの基本は割愛し、味付けや、食材のカットサイズなどを箇条書きにしている。基礎から知りたい人には別の本がいいかもしれないが、日頃から家庭料理をするという方には、むしろちょうどいい。見れば「わかる」という書き具合。
6万部を超える人気は、そのあたりにもあるのかもしれない。
著者の倉橋利江さんは、編集者で料理愛好家。料理本の編集者として出版社に勤務し、編集長として料理ムックの発行を多数手掛け、独立後に60冊以上の料理本に係わったという。なるほど、縦軸と横軸を機能的に使うレイアウトの工夫はさすがプロ。
最後に、どんな食材があるのか一例を挙げたい。本作でとりあげている食材は、ゴージャスな高級食材ではない。鶏肉、豚肉、牛肉、白菜、大根、かぼちゃ、魚、油揚げ、ハムなど幅広く、身近なものがほとんど。
レシピ本の通りに作ると、わざわざ食材を買い求めなければいけないこともあるが、本書ではそのケースは少ない。むしろ、冷蔵庫であまっている食材を本書の索引で引いて使うのがちょうどいいかもしれない。急な来客時にも役立つと思うが、工夫次第で、きっと食品ロスも減らせるだろう。
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