この人がこんな本を書いているなんて知らなかった。『だめなら逃げてみる――自分を休める225の言葉』(ポプラ社)の著者、小池一夫さん。
巻末の肩書に「漫画作家、小説家、脚本家、作詞家」とあるのを見て、ひょっとして「あの人?」と思ったらその通りだった。大ヒットした漫画『子連れ狼』(画: 小島剛夕)の原作者として余りにも有名だった小池さんだ。
もう少し巻末の経歴を見てみよう。1936年、秋田県生まれ。そのあとは具体的な記述はなくて、2010年からツイッターを始めたことが載っているだけ。70歳を超えてから新しいメディアに挑戦したわけだ。フォロアー数はすでに83万人以上。本書は、そのツイッターで小池さんが呟いた文章から225編を集めて、一部表現などを改め再編集したものだという。
たとえば「本物のお洒落」という一文。
きれいな言葉遣い。 姿勢の良さ、 本物の笑顔、 清潔さ。 本物のお洒落は、 本当にお金がかからない。
シンプルだが、その通りだと納得する。あるいは、「何か一つ美しくする」という一文。こちらも思い当たる人が多いだろう。
生活を美しくするのは、意外に簡単なこと。 何か一つ美しくすると、 それに引っ張られて周りが美しくなる。 今日は、石鹸置きを新しくしました。 そうすると洗面所周りもきれいにしたくなります。 丁寧な生活とは、そういう小さなコツの積み重ねです。
こうしたちょっとした「箴言」が225編。誰かからの借り物ではなく、いずれも著者の実人生をもとにした一言だ。さほどの説教臭さも、トシヨリっぽさも感じられない。
こうした「箴言集」で思い出すのは昔の「日めくりカレンダー」だ。名著や有名人の一言がデカデカ載っていた。最近では、小池さんと同じように、単行本化された類書も少なくないらしい。少し前には、松岡修造さんの『まいにち、修造!』(PHP研究所)などが話題になった。
小池さんの本書は、「不安と悩みについて」「自分自身について」「人との繋がりについて」「思考と行動について」「生きることについて」「前に進むことについて」「幸せについて」の7章に分けて寸言を紹介している。元気をなくした時や迷った時に励みになり、参考にできる簡単なメッセージ集だ。
小池さんは『子連れ狼』以外にも、『御用牙』(画: 神田たけ志)、『高校生無頼控』(画: 芳谷圭児)、『修羅雪姫』(画: 上村一夫)など多数の名作を生み出してきた。作品の中で主人公が吐くセリフは、小池さん作だった。いろいろな登場人物になりきって、憤慨したり、元気づけたり、悩んだり、自省したりするのはお手の物だ。
いわゆる劇画ブームをけん引した一人とされる小池さん。若い読者はもちろん、劇画時代のファンが手にすると、過去の作品とダブって思い当たる一言があるかもしれない。
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