個人的な話で恐縮だが、共働きの我が家では長年、「通販生活」を利用している。その理由を考えてみると、単純だ。ようするに商品を選ぶのが面倒くさい。量販店に行けば、ハンディクリーナーがいろいろ並んでいるが、「通販生活」なら「マキタ」で決まり。もう一台、というときもまた「マキタ」になってしまう。
本書『なぜ「それ」が買われるのか?――情報爆発時代に「選ばれる」商品の法則』 (朝日新書)を読むと、我が家の買い物パターンの理由が解き明かされていた。副題にあるように「情報爆発時代」。商品は値段やスペックよりも、「選ぶストレスがない」ことが大事になっているというのだ。その理由を本書は次のように分析する。
まず、「情報の信じられない増加」。とりわけネット時代になって急増した。スマホやパソコンでちょっとでも何かをチェックすれば、似たような情報が次から次へと押し寄せてくる。これは「買い方の多様化」とも関連している。欲しいものはお店で買うというスタイルが崩れ、ネット通販が広がった。それだけ多様な商品を選ぶ自由、買い方の自由も広がり、比較検討が可能になった。しかし、そのためには、時間が必要。ネットサーフィンをしているうちに、結局、どれがいいのか分からなくなる。
いまや共働きが一般化し、シニアになってもまだ働くケースが少なくない。「買い物にかけられる時間と労力が惜しい」から、「迷い」の時間を減らしたい。そこで消費者は、候補となる商品の範囲を「あらかじめ絞る」という買い物行動をせざるを得ない。
本書は、そうした消費者の新時代の買い物行動にマッチした「売り手」を多数紹介している。日本の例として「ほけんの窓口」なども出て来るが、とくに興味深いのは、海外の先行例だ。
例えばドイツの「コッホハウス」。レシピに沿って必要な食材をキット化して販売している。店の規模は日本のコンビニ程度。時季ごとに選び抜かれた18種類のメニューのミールキットが販売されている。今晩の食事はどうしようか。迷った人はコッホハウスに行けば、手ごろなものが並んでいる。プロのレシピに沿って、調理直前の状態になっているからラクだ。値段は高くても10ユーロ(1300円)ぐらいだという。「時間がない生活でも、おいしい料理が食べられる」フードサービス業。日本でも流行るかもしれない。
もう一つ、ドイツの雑貨店「チボー」。毎週テーマを替えて30品目を並べている。その商品は4週間しか置かない。いろいろ探し回らなくても、チボーに行くと、発見がある。
あるいは米国の家具選びのサポートをする「ローレル&ウルフ」。ネットで間取りなどの条件を申し込むと、プロのインテリアデザイナーが顧客の要望に沿った提案をしてくれる。商品を買うこともできる。
本書の著者は博報堂買物研究所。長年、消費者の買い物行動を研究しているだけあって、幅広く目配りされている。何をどう売ればよいか。販売や営業の企画で苦労している人にとっては参考になりそうだ。
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