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藩を知ると日本各地がよくわかる!

デジタル鳥瞰 47都道府県庁所在都市 東日本編

 元通産官僚で評論家の八幡和郎さん(徳島文理大学大学院教授)は、歴史や地理にも造詣が深く、『47都道府県 地名うんちく大全』など多くの著書がある。その八幡さんが都道府県庁所在都市という切り口で各都道府県と都市の成り立ちや魅力を紹介したのが本書『デジタル鳥瞰 47都道府県庁所在都市 東日本編』(講談社)だ。

 最大の特徴はデジタル鳥瞰図。空撮写真を地図に取り込んで標高が強調され立体感が出ている。各都市に、広域のものと中心部のものがある。

 たとえば、青森市の広域用を見ると、陸奥湾と八甲田山系にはさまれた平地いっぱいに市街地が広がっていることがわかる。また仙台市の中心部用には、広瀬川の深い谷が崖のように青葉城を取り囲み、河岸段丘の上に東北大学キャンパスが広がっている。

 二つ目の特徴は、中心部の鳥瞰図と見開きで終戦前後に米軍や日本軍が撮影した空撮写真が並べられていることだ。対比すると戦後の発展の様子がうかがえる。

 鳥瞰図を眺めるだけでも楽しいが、現在の都道府県や市が成立するまでの歴史的経緯の説明のほか、それぞれにうんちく編があり県内ライバル物語、県民性と市民性などの読み物が面白い。

奥州市と盛岡市はどちらが上?

 岩手県には「奥州市」という立派な名前の市が、平成の大合併で水沢市を中心に誕生した。「本当は中尊寺金色堂がある平泉町にも入って欲しかったのだが、観光都市として独自にやっていけると拒否されてしまった。というわけで、名前倒れになっている感もあるが、いつか平泉町も参加すれば『盛岡なんぞ成り上がり者』と言えるのにと地元の人は思っている」という記述には笑ってしまった。水沢は旧伊達領だが盛岡は旧南部領だ。

 旧藩がいくつかまとまって現在の県が成立したところが多いため、同じ県の中でも複雑な感情があることがわかる。

 八幡さんは教育にも関心が深いのか、しばしば各県の公立高校の進学実績に言及している。愛知県の項では、東大合格者ランキングで健闘している県立岡崎高校にふれ、「トヨタやその関連企業が立地し、総合研究大学院大学の基礎生物学研究所なども置かれて三河地域に高いレベルの人材が集まっていることの反映だ」と分析している。

 そういえば八幡さんには、『江戸三〇〇藩 最後の藩主』という著書もあることを思い出した。県よりも藩というカテゴリーが、その地域を知る上で有効なこともあるようだ。

 評者が住む千葉市は、明治6年に印旛県(下総)と木更津県(安房・上総)が合併し、県庁は佐倉と木更津の中間の千葉に置かれたことも本書で初めて知った。どうりで歴史もなく、鳥瞰図を見ても海岸を埋め立てた工場地帯と住宅団地ばかりが目に入る訳だ。

 東京の項では、江戸は豊臣秀吉が関東の首府に選定した土地であり、徳川家康自身は江戸を好まず、「江戸滞在はトータルでも五年ほどしかなく、伏見や駿府を好んだ」など、「へえー」というエピソードが披露されている。

 「東日本編」には、北海道、東北、関東甲信越、北陸、東海の24都市を収録、「西日本編」には、近畿、山陰、山陽、四国、九州、沖縄の23都市を収録。いずれも3年前の刊行だが容易に入手できる。  

  • 書名 デジタル鳥瞰 47都道府県庁所在都市 東日本編
  • 監修・編集・著者名八幡和郎 著
  • 出版社名講談社
  • 出版年月日2015年8月 6日
  • 定価本体1800円+税
  • 判型・ページ数四六判・207ページ
  • ISBN9784062692908

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