読むべき本、見逃していない?

米中対立のあおり、中国製「5Gスマホ」を日本は導入できるか?

  • 書名 習近平と米中衝突
  • サブタイトル「中華帝国」2021年の野望
  • 監修・編集・著者名近藤大介 著
  • 出版社名NHK出版
  • 出版年月日2018年11月10日
  • 定価本体820円+税
  • 判型・ページ数新書判・249ページ
  • ISBN9784140885680

 今年(2018年)4月にアメリカ・フロリダ州にあるトランプ大統領の豪壮な別荘「マー・ア・ラゴ」で中国の習近平主席との米中首脳会談が開かれ、和気あいあいとした雰囲気だったことを多くの人はまだ記憶しているだろう。しかし、いま両国は高い関税をかける経済制裁を双方ともエスカレートさせ、「米中貿易戦争」と比喩される最悪の関係となっている。この対立の背景に何があるのかを本書『習近平と米中衝突』(NHK出版新書)は、わかりやすく解説してくれる。

 著者の近藤大介さんは、日本有数の中国通ジャーナリストだ。講談社「週刊現代」編集次長、「現代ビジネス」コラムニストとして健筆をふるっている。2009年から12年まで講談社北京副社長として北京に駐在したので、中国に深い人脈を持つ。東大卒の国際情報学修士で明治大学国際日本学部講師も務めている。記者のフットワークと学者の分析力を兼ね合わせた「週刊現代」の著者の記事には定評がある。

 2017年の米朝の対立から本書を書き起こしている。トランプ大統領の金正恩委員長への態度は「近親憎悪」のようなところがあるという。「わがままで気まぐれ、計画よりも直観とスピード重視、完全トップダウン主義、会議嫌い、逆らう者は即座に抹殺(罷免)、多弁で放言癖がある、理念より実利重視......。さらに言えば個人的嗜好も、贅沢三昧、ステーキが好物、美女が大好き、信じられるのは家族だけ、妻は美人の元芸能人......」。こうした「近親憎悪的バトル」がエスカレートし、その間に立たされたのが中国だった。トランプ大統領の意向を受けて9月、北朝鮮製の繊維製品の輸入禁止などの措置を発表、北朝鮮の貿易の約9割を占める中国が、北朝鮮との貿易をストップさせる内容だった。

 10月に習主席は第19回中国共産党大会で党規約を改定し、半永久政権をもくろむ個人崇拝色を強く打ち出した。この得意の絶頂期に、トランプ大統領は訪中、「国賓待遇を超える待遇」を受けた。「習近平夫妻は、8万人の観光客を押しのけて故宮博物館を空にし、トランプ大統領夫妻を待ちうけた。まさに、『皇帝が賓客を接遇す』という、習主席が何度も夢想してきた光景を実現させたのだった」。

 首脳会談の後、大イベントがあった。中国企業がアメリカ側に総計2535億ドル(28兆8300億円)もの契約をしたと発表。近藤さんは「この時、中国がカネで買ったものは『平和』だった。2535億ドルと引き換えに、北朝鮮に対する攻撃を、少なくとも重要な全国人民代表大会が終了する2018年3月まで行わないよう求めたのである」と書く。「新型の大国関係」は復活したかのように見えた。

トランプ大統領が金委員長に伝えたメッセージ

 米朝のチキンレースがエスカレートする中、北朝鮮が平昌オリンピックに参加を表明、一気に米朝和解の2018年と転換する。トランプ政権の「仮想敵」は、北朝鮮から中国へと変わったのだ。

 3月、全国人民代表大会で憲法が改正され、中国は名実ともに「習近平の国」に生まれ変わった。この「習近平皇帝の戴冠式」が終わるのを待っていたかのように、トランプ大統領は600億ドル(6兆3000億円)もの中国製品に高関税をかける制裁措置の第一弾を発表。ただちに中国も反撃した。

 6月12日、シンガポールで開かれた米朝首脳会談を近藤さんは現地で取材、CVID(完全で検証可能、かつ不可逆的な非核化)とは程遠い内容だったが、高く評価している。そして「二人きりの40分」でトランプ大統領が金委員長に伝えたメッセージとは「核はこっそり持っていても構わない。ただし中国を脅すために使え。アメリカ本土まで届く核弾頭は許さない」というものでは、と推測する。「近親憎悪」がいつのまにか「親近感」に変化したのだろうか?

 その後、米中間では、経済制裁措置が第二弾、第三弾とエスカレート。10月4日、ペンス副大統領が「中国政府が、政治的、経済的、軍事的手段及びプロパガンダを使って、アメリカに干渉してきている」と中国を敵視する発言をした。

 近藤さんは「貿易戦争→先端技術覇権戦争→軍事衝突」へとエスカレートするかどうかを見極める分岐点は、来年(2019年)夏に中国メーカーのファーウェイが「5Gスマホ」を発売するあたりではと見ている。日本を含め同盟国は中国製「5Gスマホ」を導入するかどうか踏み絵を迫られている。軍事技術を含めた機密が中国に抜き取られる事態をアメリカは懸念しているからだ。

 アメリカと中国の「21世紀型国家の世界標準」を賭けた闘いは、第2ラウンドに入った、と近藤さんは警告している。

 習近平主席の独裁ぶりについて、本欄は『習近平のデジタル文化大革命』を紹介したばかりだ。   

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