読むべき本、見逃していない?

三島由紀夫の「一大痛恨事」とは?

  • 書名 吾輩は童貞(まだ)である
  • サブタイトル童貞について作家の語ること
  • 監修・編集・著者名【収録作家】筒井康隆、中島らも、武者小路実篤、谷川俊太郎、森鴎外、室生犀星、結城昌治、開高健、車谷長吉、横尾忠則、三島由紀夫、川端康成ほか
  • 出版社名キノブックス
  • 出版年月日2018年7月29日
  • 定価本体1300円+税
  • 判型・ページ数四六判・247ページ
  • ISBN9784909689078

 「まえがき」も「あとがき」もない不思議な本だ。だからどうしてこの本が作られたかはよく分からない。

 『吾輩は童貞(まだ)である』(キノブックス)。「童貞について作家の語ること」という副題がついている。そこから中身は想像できる。22人の作家や詩人が「童貞」に関して書いた一文をアンソロジーとしてまとめたものだ。

文豪はもちろん気鋭の若手も登場

 さまざまな作品が取り上げられている。筒井康隆「現代語裏辞典」、中島らも「性の地動説」、原田宗典「夜を走るエッチ約一名」、小谷野敦「童貞放浪記」、みうらじゅん「東京アパートメントブルース」、横尾忠則「コブナ少年(抄)」、澁澤龍彦「体験嫌い」・・・。このあたりを見ると、うーん、だいたいその関係の人たちね、と何となく納得してしまうかもしれない。

 一方で、武者小路実篤 「お目出たき人(抄)」、森鴎外「青年(抄)」、室生犀星「童貞」、三島由紀夫「童貞は一刻も早く捨てろ」、川端康成「月」など文豪の作品も登場する。さらには気鋭の若手の作品もピックアップされ、なかなか多彩なラインアップだ。

 この中でまず読むべきは三島由紀夫か。著者独特の諧謔に満ちた言い回しで、このややこしい問題について半ば真面目に語る。

 まず、自身が「童貞を失ったのがすこぶるおそく、これが人生の一大痛恨事になっている」と認める。そして、「そもそも男の人生にとって大きな悲劇は、女性というものを誤解することである。童貞を早く捨てれば捨てるほど、女性というものに関する誤解から、それだけ早く目ざめることができる。男にとってはこれが人生観の確立の第一歩であって、これをなおざりにして作られた人生観は、後年まで大きなユガミを残すのであります」と力を込める。

考慮すべき表現・語句が含まれる

 それぞれの作家のポイントはこんな感じだ。「あゝ 女と舞踏がしたい」(武者小路実篤)、「己は知らざる人であったのが、今日知る人になったのである」(森鴎外)、「自分たちのお父さんやお母さんがそんなことしているわけがない」(中島らも)、「恐れながら惹かれるのが性の世界である」(車谷長吉)。

 川端康成の短編小説「月」を読んでみる。「童貞――どうもこいつがいけない厄介物なんだ。惜しくはない荷物なんだが・・・」「ここまで重い思いをしてぶら下げて来たと言うだけでも、道端の犬にはやりたくない気持ちがするではないか」。悶々とする青年期の男の心情がつづられている。ちょうど満月の夜。最後はこんな感じだ。

「ああ! 月夜! お前にこの感情を上げよう。」

 本件に関して、谷川俊太郎さんがとても活字化できないような詩を書いていることも初めて知った。「本書には、今日の観点からは考慮すべき表現・語句が含まれる」という注釈がついている。とにかくいろいろと発見がある本だ。手軽に読めるので、興味がある作家のところを拾うだけでも楽しい。

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