映画「モロッコ」などに登場するフランス外人部隊。日本とは縁遠いものと思っていたら、そうでもないらしい。本書『フランス外人部隊』(株式会社KADOKAWA)は、著者の野田力さんが、6年半の入隊体験をつづったものだ。研究者でも軍事専門家でもなく、兵士として体験したことが素直に書かれている。自らアフガニスタン行きを志願し、危険と隣り合わせの日々も送ったが、トラバーユ感覚のゆるさも行間ににじむ。就職先のひとつとしてのフランス外人部隊? そんな日本人の若者が増えているというのだ。
フランス外人部隊は、フランス陸軍に所属し、主にフランス国籍を持たない外国人志願者で構成される正規の軍隊だ。100か国以上から志願してきた8000人ほどが所属している。
野田さんは西日本に生まれ、中学3年生の時に阪神・淡路大震災が起きた。被害は受けなかったが、災害救援で活動する自衛隊に関心を持った。高校卒業後、京都の宿泊施設で働いていた時にフランス人と仲良くなり好感を持ったという。自衛隊の入隊試験を受けたが、15回も落ち日本に居場所はないと思い詰め、15万円と往復チケットを持ち、2004年10月、フランスの徴募所の門をたたいた。
徴募所の段階で落とされる人もいるが通過し、第一外人連隊のあるオバーニュで、面接、適性検査、健康診断、知能テスト、体力テストなどを受けた。競争率が10倍ほどになる年もあるそうだ。「ならず者の集まり」「傭兵」といったイメージは誤っている。
志願した段階で本名をはく奪される。野田力というペンネームもこの時つけられた「リキ・ノダ」という名前にちなんでいる。基礎教育訓練が終わって連隊に配属され本名に戻る手続きまで、その別の名前で生きる。
野田さんが配属されたのはコルシカ島にあるパラシュート連隊だった。その後衛生兵となり、08年に伍長、09年には上級伍長に昇進した。5年契約の満期を迎え、野田さんはアフガニスタンへの派遣を希望し、契約を延長した。戦地を体験したいという気持ちもあったという。国連の国際治安支援部隊にフランスも参加し、アルカイダやタリバンと戦っていた。衛生兵とはいえ、装甲車を運転して戦闘地域に行くこともあった。足元から1メートルのところに着弾したことも。それ以前にコートジボワールに派遣された時は銃を持った3人とひとりで対峙し、死を覚悟したそうだ。
外人部隊の兵士の待遇についても詳しく書かれている。現在、基礎教育訓練が終わった段階の手取りは1300ユーロ(約17万5000円)、海外派遣になると手当も厚く、野田さんの月の手取りは40万円ほどにもなった。有給休暇は年間45日取れる。19年半以上勤務すれば月10万円の恩給もつく。「外人部隊は、就職先として考えてもおかしくない組織」と書いている。「外人部隊に入りたい」と相談を受けることも多いという。掃除や草むしりといった雑用が9割と考えて「清掃スタッフになるつもりで行ったほうがいい」とアドバイスしているそうだ。
帰国した野田さんは看護学校に入り、看護師となったが退職し、生き方を模索している最中だ。すでに類書も出ており、数十人の日本人がフランス外人部隊に所属していると見られる。
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