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コンテンツって、そういうことだったのか

人がうごくコンテンツのつくり方

 「コンテンツ」という言葉は、インターネットが普及するにつれて頻繁に使われるようになった。「内容」や「中身」を意味する英語で、日本語でもカタカナになってそのまま使われる。いまではかなり一般的な言葉になったようだが、なおあいまいな感じも残している。

 本書『人がうごくコンテンツのつくり方』(クロスメディア・パブリッシング)は、人気コンテンツのプロデューサーが、現代の「コンテンツ」の具体化を試みたもの。突き詰めれば、インターネット以前の時代から「コンテンツ」は存在していたが、当時はそれぞれ独立した「内容」「中身」であり、新時代にそれらがマルチユース化、マルチメディア化して、コンテンツに転化した。

高校1年程度の英単語

 コンテンツは、英語の「contents」のこと。「内容」「中身」を意味する「content」が、具体的な容器や書物などの内容を指して使われる場合に複数形になるので、コンテントではなく、コンテンツとして日本語化されたとみられる。「content」はまた、叙述的用法で形容詞にも使われ、この場合は「~に満足して」という意味。だから、いわば積極的に評価できる「内容」「中身」がコンテンツであり、英語では、新聞・雑誌の内容、テレビ番組の中身を指しても使われている。

 英単語としてはしばしば使われることばで特別な用語ではなく、日本の英語学習での水準をみると高校1年程度、英検では準2級程度のレベル。イージーな単語であり「コンテンツという言葉が一般的に使われるようになったのは、おそらく20年位前から」と相当な時間もたっているのに「実はその意味ってあまり定義されていない」のが大方の見方だ。

 インターネット時代の前には、出版社であればその出版物が、放送局であれば番組が、また、メーカーであればその製品が、これらの企業や組織の「内容」「中身」をコンテンツと呼ぶようなことはなかった。しかし、インターネットをはじめとするテクノロジーの進歩により媒体の垣根を越えやすくなり、「内容」や「中身」の数や種類が増加。著者は「業界の垣根や境目が曖昧になっていくにつれ、つくったものを様々なメディアでマルチユースするのが当たり前になり、便利な言葉として『コンテンツ』が定着したのだろう」と述べている。

「逃走中」に拡散仕掛け

 つまり「コンテンツ」という呼び方になっても、その実態は「内容」「中身」であり、コンテンツにあいまいなひびきがあるのは、言葉の指す範囲が幅広過ぎるからだろう。わたしたちが日常の会話で、テレビ番組や人気のウェブサイトやSNSのことをネタにしても「あのコンテンツは...」などということがないのもそのためだ。

 「私は『この世の中にあるものすべてがコンテンツである』と考えている」と著者。多くの人からコンテンツだと認識されれば、その商品やサービスはコンテンツになるという。「一般的にはアニメやマンガ、映画や音楽、ゆるキャラやゲームなど、モノや映像がブランド化されて、それがビジネスに繋がったりしているものがコンテンツだと認識されている」

 著者は、独自のコンテンツ研究から、ウケるもの、拡散しやすいものの性質や共通点をピックアップし、本書にまとめあげた。大学卒業後に入社したフジテレビでは「逃走中」や「戦闘中」「Numer0n(ヌメロン)」などの人気ゲームバラエティーなど多数の番組を企画した。鬼ごっこの大規模バージョンである「逃走中」については「マネしてもらうことにこだわった」と、拡散のために仕掛けを施したことを明かしている。

無からは生まれない

 著者は本書のなかで「0(ゼロ)から1は生まれない」ことを繰り返して強調。コンテンツとなるべきものは、何かしらのインプットから育つか、あるいは分解されてかけ合わさりながら生まれるかだと述べる。そしてインターネットやメディアなどを通して広まり、たくさんの人が知ってそれが長く続くと、生活の一部や習慣になる。著者は、その例の一つとして、お尻を洗う機能がついたトイレの商標を挙げている。

 スマートフォンやタブレット端末などの登場でインターネットはかつてよりマルチ化。テレビは多チャンネル化し、ラジオもネットで聴取できるようになるなどマルチメディア化している。その分、コンテンツは「毎日数えきれない」ほど世に送り出されている。だから、と、著者はこう述べる。「ハズれたコンテンツになんて構っていられないし、記憶にも残らない。これがコンテンツの良いところ。つくる人にとって、こんな良い仕事はない。楽しいうえにリスクがないのだから」。ますます「コンテンツ」の意味があいまいになりそうだ。

  • 書名 人がうごくコンテンツのつくり方
  • 監修・編集・著者名高瀬 敦也 著
  • 出版社名クロスメディア・パブリッシング
  • 出版年月日2018年8月11日
  • 定価本体1380円+税
  • 判型・ページ数B6判・240ページ
  • ISBN9784295402268
 

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