読むべき本、見逃していない?

健康のためには腹式呼吸より胸式呼吸

すべての不調は呼吸が原因

 だれもが無意識的に行っているからなのか、生きるうえでも欠かせない「呼吸」は、久しく続く健康ブームのなかでも、テーマとしては地味な印象だ。本書『すべての不調は呼吸が原因』(幻冬舎)は、ないがしろにされている感がある呼吸が実は、健康を考えるうえでは基本中の基本であることを示したもの。簡単なトレーニングしだいで向上、強化ができ、アンチエイジングを考える人には欠かせない健康法という。

年齢のせいばかりではない息切れ

 バリアフリー化の普及で、駅などで階段の上り下りをするのが減ったとはいえ、ちょうど来た電車やバスに乗ろうとして急いだりすると、息が乱れて苦しい思いをしたりする。また、ちょっとしたことで咳込んでしまい、呼吸がしづらくなることなどがないだろうか。こうしたことを年齢のせいだから仕方がないなどと放っておいてはいけないという。

 これらの不調は呼吸機能が衰えによるものではあるけれど、それは手当によって防げるもの。放置すれば生命力の低下を進める可能性もあるという。

 著者の本間生夫さんは呼吸神経生理学を専門とする医学博士。昭和大学医学部教授から2013年に東京有明医療大学副学長に転じ、17年に同大学長に就任した。テレビの健康情報番組などにも数多く出演している。

 年齢を重ねるごとに呼吸機能が低下するのは避けられないこと。著者によると、呼吸の衰えはわりと若いうちから始まり徐々に進んでいくのに加え無意識的に行われている作業であるため、多くの人が歳を重ねても年齢に関係なく同じ呼吸リズムが一生続くと思いがちで、その一方、息切れなどを感じても「年のせい」にして、立ち止まって考えることがないという。

「呼吸筋の老朽化」と「肺の老朽化」

 加齢による呼吸機能の低下の大きな原因は「呼吸筋の老朽化」と「肺の老朽化」。呼吸を担う肺は、それ自体で膨らんだり縮んだりしているのではなく、その収縮運動を可能にしているのは周囲の呼吸筋で、その力で人は呼吸ができている。ところが、この呼吸筋は加齢により硬くなって収縮運動が不十分となり呼吸が浅くなってしまうのだ。

 呼吸筋の運動で収縮して呼吸を行う肺は、胸郭のなかに収まっている風船のようなものという。加齢により、時間が経過して実際の風船のように、いつのまにか弾力が落ち、それによりどうなるかというと、膨らんだり縮んだりする動きが少なくなって換気量が落ち、十分な量の空気の出し入れができなくなってくる。

 呼吸筋の衰えと肺の弾力の低下により生じるのは、肺の中の「機能的残気量」の増加。これは、肺をつぶれさせないために必要なものとされるが、残気量が増えるということは、次の吸気の際に十分な空気を吸えなくなるということで、換気効率の低下につながる。換気が悪くなると、より多くの空気を取り込もうとするメカニズムが作動。息苦しさを感じるようになるという。

横隔膜は肺を広げるが縮めない

 呼吸は筋肉で促されるものであるからこそ、著者は「腹式呼吸よりも胸式呼吸で鍛えるほうがいい」とアドバイス。「呼吸の力をちゃんとつけていくなら、胸式呼吸の方をしっかりトレーニングしていくべき」。呼吸筋はトレーニングによって強化でき、体のほかの筋肉と同様に何歳になってからでも強化できるという。

 腹式呼吸は横隔膜を意識したもので、声楽などで重視されている。著者は「横隔膜も肺を大きく広げることで呼吸に欠かすことのできない働きをする。しかし横隔膜は肺を縮めるための呼吸筋ではないので、機能的残気量を減らすことに役立たない」と指摘。呼吸全体を向上させるためには、呼吸筋のパワーアップを図る方がベターという。さらに、声楽でも決して胸の筋肉を使っていないわけではないと述べ「その証拠に歌手の胸は大きく、たくましい。一方で、呼吸器疾患の患者さんはおしなべて胸が貧弱」と付け加えた。

 ほかに、深呼吸が必ずしも健康にはよくないことや、二酸化炭素の悪玉視が正しくないこと、活性酸素をめぐる誤解、口呼吸と認知症の意外な関係性など、呼吸をめぐる健康情報の迷信や誤解についての指摘や、呼吸筋を鍛える簡単なストレッチ法などの紹介が盛り込まれている。

  • 書名 すべての不調は呼吸が原因
  • 監修・編集・著者名本間 生夫 著
  • 出版社名幻冬舎
  • 出版年月日2018年7月30日
  • 定価本体780円+税
  • 判型・ページ数新書・209ページ
  • ISBN9784344985100

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