世界的大ベストセラーとなった『ダ・ヴィンチ・コード』の著者ダン・ブラウン氏の新刊『オリジン』(株式会社KADOKAWA)には、『ダ・ヴィンチ・コード』の主人公ロバート・ラングドン教授が登場する。2000年に刊行された『天使と悪魔』以来、『ダ・ヴィンチ・コード』、『ロスト・シンボル』、『インフェルノ』と続くラングドン・シリーズの最新作となる。
『ダ・ヴィンチ・コード』の舞台はフランス・パリのルーブル美術館から始まり、イタリア・フィレンツェのウフィッツィ美術館が所蔵するダ・ヴィンチの未完の傑作「東方三博士の礼拝」にまつわるエピソードが作中で使われている。本書をキリスト教の教義とその正当性に対する著しい挑戦と見なす人々からの論争も巻き起こした。
著者の妻が美術史研究者であり画家でもあるという環境のせいだろうか、『オリジン』でも美術が大きなモチーフになっている。今回の舞台はスペイン・ビルバオに出来たグッゲンハイム美術館の分館だ。対象も古美術ではなく現代アート。著者もスペインには合計8回ほど通算2年暮らしたとあって、随所にスペインへの深い理解が感じられる。
このほど来日したダン・ブラウン氏は、本書のテーマは「われわれはどこから来て、どこへ行くのか、ということだ」と語った。具体的には人工知能(AI)を含む科学技術と宗教との対立が描かれる。
主人公のロバート・ラングドン教授の教え子の未来学者が人類の起源と未来を科学的に証明すると予告し、宗教界が騒然とするというストーリーだ。
ネット上にはすでに多くの感想がアップされているが、「日本人にとって、それほど驚きのない結論だった」「『ダ・ヴィンチ・コード』のような謎解きの面白さはあまりなかった」というのが平均的な評価のようだ。
シリーズの日本国内発行部数は1722万部と驚異的だ。キリスト教の宗教的背景が薄い日本で、なぜそれほど読まれているのだろうか。宗教象徴学者ラングドン教授による謎解きの面白さが最大の魅力だろう。知的なミステリーへの渇望があるとしたら、日本のミステリー作家にも奮起を促したいところだが、さてそれはどうか。キリスト教神学をめぐる長い異端論争があった欧米の知的バックグラウンドの厚みは日本にはない。仮に仏教や神道をモチーフにしたミステリーが書かれたとして、論理的に構築できるだろうか? まだしばらくはダン・ブラウン氏の独壇場が続きそうだ。
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