「論語」は紀元前、2500年も前の中国春秋時代の思想家、孔子の言行録。儒教思想を伝えるもので後世に大きな影響を与えたとされる。そのなかから生まれた故事成語は多く、わたしたちも出典が論語と知らずに口にしたり耳にしていることわざが少なくない。
本書『アスリート論語塾』(メディア・パル)は、対象をアスリートに特化して、さまざまなスポーツシーンで選手、指導者らの心に染みると思われる言葉を「論語」から集めたもの。
著者は「昭和の大碩学」と称せられた思想家で、歴代首相の指南役を務めた安岡正篤を祖父に持つ漢学者。全国各地で子どもたちやその保護者らに「論語」を講義する定例講座を持つ一方、「論語」についての著作も数多い。なかには人気キャラクター「ドラえもん」を案内役にした入門書などがあり、「論語」ブームの火付け役になった。
孔子の時代にはもちろん、アスリートとかスポーツなどは、その概念も存在しなかっただろうが、著者は、スポーツにかかわる人たちこそ「論語」に親しんでほしいと述べる。
たとえば、四文字熟語の「温故知新」が発祥したとされる「為政二」の「子曰、温故而知新、可以為師矣(子曰く、故きを温ねて新しきを知る、以って師と為るべし)」の「アスリート向け解説」はこうだ。
「何かを成し遂げたいと思ったら、素直な心でまず先輩たちの知識や技術を学んでみる。そしてそれをこれからの自分に活かしてみる。謙虚な姿勢が大きな結果を生むことになるのです」
「先輩たちの知識や技術」を広い意味にとらえると、日大アメリカンフットボール事件で反則タックルを認め謝罪した日大選手と重なるように見える。
アメフットのほか、相撲、レスリングと、アスリートをめぐってはこのところ立て続けにハラスメント絡みの問題が取りざたされている。著者は「日々の厳しい訓練、結果を出さなければならない重圧、努力が結果に結びつかなかった時の挫折感、人間関係等、迷いや悩みの多い人たちにこそ『論語』の言葉に触れてほしい」と述べている。
アスリートの世界と「論語」とはこれまでにも無縁ではなく、プロ野球で数々の球団を率いてリーグ優勝、日本シリーズ制覇を果たし名将と呼ばれる野村克也監督は、孔子に学んだ精神論で知られ、「論語」を書名に掲げた著作もある。プロ野球ではまた、日本ハムの栗山英樹監督が「論語」を指導に採り入れており本書の帯にも「推薦人」として登場。選手らに「社会人としての人間力を高めるために」として、関連の書籍を勧めているという。
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