読むべき本、見逃していない?

狩りは趣味と実戦訓練だった西郷隆盛

西郷隆盛はなぜ犬を連れているのか

 東京・上野公園にある西郷隆盛の銅像は犬を連れている。その理由を考えたことがありますか? 着流しの単衣だし、犬を連れての散歩姿と思っている人が多いのでは。

 本書『西郷隆盛はなぜ犬を連れているのか』(草思社)の著者、仁科邦男さんは元毎日新聞記者で、犬と人間の生活についての研究と著作活動をつづけ、『犬の伊勢参り』(平凡社新書)、『犬たちの明治維新 ポチの誕生』(草思社)などを書いている。だから元々は犬好きの人。その仁科さんが西郷について調べようと思ったのは、山形県酒田市の南洲神社を訪れ、西郷のことばをまとめた『南洲翁遺訓』が、今も持ち帰り自由の小冊子となっているのに感銘を受けたからだという。戊辰戦争で賊軍とされた庄内藩に西郷が寛大な処置をくだしたことに藩主、藩士らが恩義を感じ、『南洲翁遺訓』が作られたのだった。調べてみると、数多くの文献に西郷と犬との関係が記されていた。

 NHKの大河ドラマ「西郷どん」では、これから奄美大島へ流されるところだが、奄美で西郷がやっていたことは「小鳥撃ち、鰻釣り、猪狩り、魚釣り、イカ釣り、相撲」で、「犬は四、五匹飼っておられた」(『南洲翁逸話』(鹿児島県教育会編)という。相撲以外は狩りばかり。さまざまな狩りでうさばらしをしていたようだ。仁科さんは犬を連れたウサギ狩りに最初にはまったのは、この奄美時代ではないかと推測している。これ以降、西郷はさまざまな場所で犬とともにいる姿を記録されている。なお、犬は単なるおともではなく、追い込み猟には欠かせない猟犬だったという。

狩りをしながら戦闘の準備

 京都でも犬を飼っていた。祇園の座敷に犬を連れて上がっていたことも記録に残っている。京都周辺でも狩りをしていた。仁科さんは狩りをしながらも地勢を知り、戊申戦争にも備えていたのでは、と見る。江戸時代、将軍や藩主は鷹狩をして領地の地勢を覚えた。そこからの類推だろう。鹿児島に帰ってからも盛大にウサギ狩りを何度もしている。これも西南戦争を意識してのことだったかもしれないという。

 西南戦争にも3匹の犬とともに出陣し、死後に戦地で捕獲され船で神戸まで3匹は運ばれたと当時の新聞に報じられたそうだ。

 明治22年、大日本帝国憲法の発布の時、天皇の特旨により罪を許され、正三位を追贈された。さっそく銅像建設の話が動き始めた。明治31年に完成した犬連れ西郷像はプラン3作目で「薩摩絣の筒袖に兵児帯姿、左腰に短刀を差し、帯に兎わなを下げ、草履履き、右手に猟犬を引き連れた西郷像」を発案したのは従弟の大山巌(当時陸軍大将)だったそうだ。西南戦争で捕獲された犬も大山巌が引き取ったというから、犬への思い入れも深かったようだ。銅像に犬も登場して西郷も本望だろう。

『未完の西郷隆盛』(新潮社)でも西郷の思想のスケールの大きさが紹介されていたが、趣味も常人の枠を超えていたようだ。

 

  • 書名 西郷隆盛はなぜ犬を連れているのか
  • 監修・編集・著者名仁科邦男 著
  • 出版社名草思社
  • 出版年月日2017年12月22日
  • 定価本体1500円+税
  • 判型・ページ数四六判・287ページ
  • ISBN9784794223128

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