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初心者が手軽に楽しめる「150年前の日本」

レンズが撮らえた幕末維新の日本

 幕末の様子をリアルに知るには、当時撮影された写真が手っ取り早い。本書『レンズが撮らえた幕末維新の日本』は明治維新150年を記念し、主に当時の人物や風景を写真でたどったものだ。レンズが撮らえた」という山川出版社のシリーズの最近刊で17冊目になる。

 多数の写真が掲載されているが、撮影者ではイタリア生まれのイギリスの写真家、フェリーチェ・ベアト(1832年~1909)が目に付く。

 ベアトは1863年に来日。64年から67年まで日本で、イギリス人の画家・漫画家のチャールズ・ワーグマン(1832~91)と共同で写真と絵画の事務所を開いていた。当時の日本の風俗などをベアトは写真で、ワーグマンは絵画で残した。ワーグマンの『幕末維新素描紀行』はBOOKウォッチで紹介済みだ。

 本書は7章に分かれている。「幕末維新の暮らしと職人」、「清楚で華麗な女性たち」、「時代を創った男たち」、「写真にドラマあり」、「幕末維新の日本の風景」、「幕末維新の海外渡航」、「幕末の城」。このほか冒頭には「カラー特集」として、「手彩色写真で甦った幕末維新」の特集があり、モノクロ写真に、日本画や水彩画の技法で着色されてカラーになった写真が掲載されている。主にベアトの事務所で働いていた日本人の絵付け師によるものだ。彼らの仕事風景の写真もある。このほか撮影者、撮影時期不明の写真も少なくない。

 「女性たち」の章では、明治期の写真も多い。当時の芸者のブロマイドのような写真も多数あり、親しめる。

 このシリーズでは、『レンズが撮らえた オックスフォード大学所蔵幕末明治の日本』、『レンズが撮らえた幕末明治の女たち』、『レンズが撮らえた幕末日本の城―永久保存版』、『レンズが撮らえた幕末維新の志士たち』などが刊行されている。本書はそれらのエッセンスを拾い上げた総集編ともいえる。シリーズをこれまでに見ている人には既視感があるが、初めての人に多ジャンルにわたって盛りだくさんなので楽しめるだろう。

 類書では『写真のなかの江戸――絵図と古地図で読み解く20の都市風景』なども、BOOKウォッチでは紹介している。

 先日、東京・上野公園に行ったら、幕末を彩った人たちの写真が大きなパネルになって並んでいた。明治天皇や徳川慶喜、さらには一般の女性など。足を止めて見入る人の姿が目立った。上野といえば、幕末ゆかりの地。彰義隊ら旧幕府軍と薩摩藩、長州藩を中心とする新政府軍の間で激しい戦闘があり、多数が戦死した場所だが、そうした説明が特に見当たらなかったのが残念だった。

  • 書名 レンズが撮らえた幕末維新の日本
  • 監修・編集・著者名高橋則英(監修)
  • 出版社名山川出版社
  • 出版年月日2017年12月13日
  • 定価本体1600円+税
  • 判型・ページ数A5判・207ページ
  • ISBN9784634151260
 

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