大学の第二外国語でフランス語をとったり、NHKの語学講座でフランス語を聞いたりして、フランス語を話せるようにしたいと思いながら挫折した人は多いだろう。評者もそんな体験を持っている。本書『世界一簡単なフランス語の本』(幻冬舎)のタイトルを見て、本当かなと思いながら読み始めて納得した。著者の中条省平さんは、学習院大学フランス語圏文化学科教授として、授業でなぜ学生たちがフランス語を「ものにできなかったか」を考え、画期的な方法を薄い新書にまとめたのだ。
その方法とはアルファベット(フランス語ではアルファベ)一覧表を後回しにすることだった。「フランス語の綴りと発音の関係をきちんと憶えること。これさえできれば、フランス語はものになる」と中条さんは力説する。教科書でわずか2~3ページ分にすぎない。
その規則をいくつか挙げると。「語尾に出てくる単独の子音とeは発音しない」「a、i、o、はア、イ、オだが、uはユ」「hはまったく読まない。Cはスとクの2通り」などだ。
英語の綴りと発音の関係は規則性がもう少し複雑なので、単語ごとに確実に憶える必要があるが、フランス語は実に簡単なのだ。上に記したいくつかのことを押さえるだけで、「フランスを代表する日刊紙ル・モンドの社説だって声に出して読める」という(内容の理解は別だが)。声に出して読むことで、フランス語がものになったと錯覚することが大切なようだ。
発音の後は、文法の入門書のように、男性名詞と女性名詞、不定冠詞と定冠詞、動詞の活用、人称代名詞と進む。最終章では、過去形と複合過去、半過去、近接未来、単純未来と時制まで進むから、基本的な項目はおさらいできる。
中条さんは文芸評論や映画評論の本を何冊も出している人なので、例文にも「異邦人」や「失われた時を求めて」の冒頭の文章が出てきて、なんとなくフランス文化にふれた雰囲気がするのもいい。
パラパラとめくっているうちに、フランス語が読めるようになり、文法の基礎がマスターできるかもしれないという点ではまさに画期的なフランス語入門書だ。もっともフランス語の発音自体は、日本人にとって必ずしも簡単ではなく、苦労したことを思い出した。
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