旅行の楽しみのひとつに食事を挙げる人は多いはず。宿泊先を決めるうえでも重要なファクターだ。移動の途中の駅弁なども出かける目的になろう。それでは空の旅で提供される機内食は、どんな位置付けになるのだろう。
機内食の内容で航空会社を選ぶということを普通はしないし、座席のクラスにもよるが、選択肢はごく限られている。いわば「給食」なのだが、航空各社はメニューの差別化に余念がなく関心が高まっているという。『みんなの機内食 天空のレストランにようこそ!』(翔泳社)は、そんな上昇気流に乗って送り出された一冊。
各航空会社の機内食の紹介しているウェブサイト「機内食ドットコム」は15年前に創設されて、いまでは1日あたり3万を超えるアクセスがある人気サイトに成長した。利用者が投稿した写真や感想などで構成され、世界230社の1万食以上が収録されている。規模は「世界最大級」という。本書は同サイトを書籍化したもの。6年前に第1弾を刊行したが続編の要望が多く、日本航空(JAL)の機内食工場ルポなど書き下ろしコラムを加えて出版された。
航空機のファーストクラス搭乗はあこがれの空の旅。利用できる路線も限られている。本書の第1章は「ファーストクラス」。いきなり豪華な旅が楽しめる。日本航空と全日空の成田―米ニューヨーク便の食事が隣り合うページに掲載され、味比べならぬ見比べができる。オマールエビやマツタケのぷりぷりぶりが写真を通してもつたわってくる。また、搭乗時間1時間ほどの羽田―伊丹便にもファーストクラスがあり、しっかりした料理が提供されていることが紹介されている。
機内食は1930年代、米国で航空機が交通手段として一般に広まるのと前後して提供されるようになったサンドイッチが起源という。その後、航空機製造をめぐる技術や、調理、食品加工技術が向上。クラスの応じての食事の充実化が図られてきた。
近年は国内外の各社とも、有名店や有名シェフとコラボレーションした食事サービスに力を入れており、いわゆるミシュラン星の名店の味を空の上で味わうことができる。
機内食のグルメ志向が加速したのは、格安航空会社(LCC)の拡大が理由の一つのよう。LCCは2000年代後半から参入が相次ぎ、12年には新規3社が運航をはじめLCC元年といわれる。その成長ぶりに危機感を抱いたフルサービスキャリア(FSC)の各社は、セールスポイントのサービスを強化。JALは13年に食事を重視した新コンセプトを採り入れ、予約困難とされる人気店のシェフらを機内食の監修に招いたものだ。
書き下ろしコラムには機内食工場ルポのほか、「豪華すぎる」といわれる、アラブ首長国連邦・エミレーツ航空のファーストクラス搭乗記、プライベートジェットの機内食体験記、有名航空カメラマンによる機内食撮影講座などを収録。
機内食は、長時間フライトに必要だから提供される「給食」ではなく、空の旅の楽しむ重要なファクターであることが分かる一冊。
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