読むべき本、見逃していない?

急成長した会社で、最も重視されていること

EXTREME TEAMS(エクストリーム・チームズ)

 米国で1998年にDVDレンタルから身を起こしたネットフリックスは、その約10年後に映像ストリーミング配信に転じて成長を加速させた。2015年には日本上陸を果たして事業を拡大しており、国内でも知名度をあげている。同社の成長を支えている主なものの一つは、卓越したと認められる人材だけで構成される職場の「濃度の高さ」という。プロスポーツのバイアウト契約のように、不適となった従業員は手当を払いリリースするという。

 ネットフリックスなど米国の新興の企業には、従来の大企業や有名企業にはみられなかった試みにより大幅な成長を遂げたものが少なくなく、本書『EXTREME TEAMS(エクストリーム・チームズ)』(すばる舎)では、それらの共通の原動力は「エクストリーム・チーム」の存在であると唱える。「エクストリーム(EXTREME)」は「極端な」「極度の」などの意味。本書では7社を分析の対象にしているが「極端」の内容はさまざまで、ネットフリックスとは対照的なケースもある。

次世代担う7社の原動力は「極端さ」

 エクストリーム・チームを持つ企業として本書が選んだのは、ネットフリックスのほか、オーガニックを中心にした食料品スーパーのホールフーズ、アニメーションスタジオのピクサー、靴を中心としたアパレル通販のザッポス、民泊仲介サイトを運営するエアビーアンドビー、環境配慮の製品づくりで知られる衣料品製造販売のパタゴニア、中国のインターネットサービス大手アリババ。「7社とも自社よりも遥かに規模の大きい企業を打ち負かして、それぞれの業界のリーディングカンパニーとなっている」という。

 著者のロバート・ブルース・ショー氏は経営コンサルタント。米エール大学で組織行動学の博士課程を修了し、リーダーとチームの能力を発揮させるコンサルティングを専門にしている。本書では各企業を、経営というより、独特の人事や編成の面から分析している。なかには、日本の慣習からは異次元的なシステムが会社の原動力になっているケースもある。

ネットフリックスが実践する「少数精鋭」

 ネットフリックスがDVDレンタルに乗り出したころ、米国内ではビデオ・ DVDレンタルチェーンのブロックバスターが全米各地に店舗展開し隆盛を誇っていた。ネットフリックスは、アマゾン式のビジネスを考えていて、共同創業者のリード・ヘイスティングス現CEO(最高経営責任者)らが始めたのはDVDの郵送だった。DVDがビデオに替わって家庭での映画視聴の手段として定着するとみてトライしたものだが、見込みは当たり消費者からの支持を得る。

 DVDメーカーや販売業者に働きかけて作品のDVD化を促し、ネットフリックスは品揃えを強化。それらをオンラインで紹介する一方、料金体系を単純化して会員を募りビジネスはすっかり定着するようになった。一方、ブロックバスターは9000以上にも拡大した店舗網が重荷となって、軽量、小型のDVDがビデオにとってかわったことで加速した宅配への対応などが遅れ、最終的には倒産にいたったものだ。

 ネットフリックスはこの後も技術の進歩や社会の変化を敏感にとらえ成長を続ける。映画とテレビ番組のオンラインストリーミング配信に乗り出し、今やその業界では世界のリーディングカンパニーとなっている。さらにはオリジナル作品の制作にも業務を拡大。同社について本書は「今後、世界でも支配的なメディア企業となっていく可能性が高い」とみている。

 ネットフリックスのこれまでの成功や成長を可能にしてきたのは、ヘイスティングスCEOらによれば「人材濃度」の高さによる。つまり会社が卓越したと認めた人材だけに絞って組織を編成したこの成果だというのだ。

 同社では過去にキャッシュフローが回らず有能な社員を残して3割ほどを解雇した際、成長の取り組みがしばらく中断するのではないかと考えられたのだが、実際には少人数になってからの方が能率が向上し質も高くなった。得られた教訓は「少数精鋭」。ネットフリックスの場合は会社全体が「エクストリーム・チーム」ということのようだ。高い人材濃度を維持するための同社人事部の仕事は、去ってもらう社員に「不適格」であることを告げ、きちんと解雇手当を支払うことだという。

 しかし役に立たないからと放り出すだけなら、ブラック企業と非難され会社にも傷がつく。同社の元人事部リーダーは「ネットフリックスという会社が偉大であるためには、この会社が次の就職先への良いステップになるようでなくてはいけない」と述べる。米国ではビジネスマンらが転職を重ねてキャリアアップを目指すのは珍しくはない。ネットフリックスは転職の世界で2段ジャンプ、3段跳びの踏み台にを目指すということか。

バス運転手に無礼な態度で不採用

 ネットフリックスが成果を出せない者に対して迅速に厳しい判断を下すのは「市場の競争に勝つために必要な基準を下回る人材がいるのに、その現実に向き合わずにいると、会社に停滞または失敗を招くと確信しているから」なのだが、別の業界で先端をいく企業をみても「エクストリーム・チーム」を編成できるかどうかは人材をそろえられるかどうかのようだ。

 ザッポスは人材採用をめぐっては、さまざまな観点から適性を審査する。初めて本社に足を踏み入れたとき周囲の人間とどう接したかなどをみて、会社の価値観に合わない振る舞いをした応望者はそれで不採用になるという。あるとき、きわめて能力が高い人材の応募があったが、その応募者は空港から会社まで送迎した社用バスの運転手に無礼な態度をとったことが理由で採用にはいたらなかったという。内定後でも遅刻やオリエンテーション軽視が原因で採用が取り消しになったこともある。

 著者は「どんな偉業であれ、協力して結果を出せる人材を集められるかどうかが成功を決めるカギなのだ」という。ネットフリックスでは不適格な人材を排除してチームとしての精度をたかめたものだが、ザッポスやホールフーズ、エアビーアンドビーなどでは一人ひとりの採用に時間をかけ、最初から適合する人材をそろえるよう努めている。会社やチームの立ち上げ当初は、企業文化に適した人材をそろえることが重要だ。というのも、当初のメンバーによりつくられた雰囲気がのちの採用に影響し成長・拡大後の文化も大きく左右すると考えられるからだ。

アップルのジョブズ氏も人材重視

 エアビーアンドビーの創業者であるブライアン・チェスキーCEOは、最初のエンジニアの一人を採用する際に5か月かけて数千件の履歴書に目を通したあと、数百人と面接してから決めた。同CEOは、それだけ時間がかかった理由を問われ、一人目のエンジニアを入れるというとことは会社にDNAを取り込むことだからと述べている。「会社が軌道に乗れば、その一人目に似た人材が1000人でも集まる」ことを期したものだ。

 本書に紹介されている次世代最先端企業の一世代前に先端企業のリーダーだったアップルの創業者、スティーブ・ジョブズ氏も「成功のカギ」が優秀な人材をそろえることと確信していたという。本書では、同社のチーフ・デザイン・オフィサー(最高デザイン責任者)、ジョナサン・アイブ氏の言葉を引用。アイブ氏は、ジョブズ氏についてチーム運営では間違っていた部分もあるとしながら、チームに対して容赦ない厳しいフィードバックを主張するジョブズ氏に敬意を表しながらも、その方針には否定的だ。チームが優れた結果を出すにはメンバー同士のきずなが必須であり、そう認識して育てていかねばならないというのがアイブ氏の考えという。

 今や世界をリードするアップルやグーグルなどのほか、本書に取り上げられている各企業について個別に論じた書籍はこれまでに数多く出されているが、それを横断的にとりあげ、テーマによっては比較して分析した本書は、1社についての掘り下げは物足りなさを感じるものの、「エクストリーム・チーム」という切り口は、企業によって、そのあり方が多彩で興味深い。海の向こうの話とはいえ、いずれも世界をリードする企業だから、日本のビジネスマンにも仕事への取り組みの参考になるだろう。転職、就職を予定している人たちにとっては、希望の会社が先端企業に属すものであればとくに、アプローチの仕方を練るテキストにもなりそうだ。

  • 書名 EXTREME TEAMS(エクストリーム・チームズ)
  • サブタイトルアップル、グーグルに続く次世代最先端企業の成功の秘訣
  • 監修・編集・著者名ロバート・ブルース・ショー著、上原裕美子訳
  • 出版社名すばる舎
  • 出版年月日2017年11月25日
  • 定価本体1800円+税
  • 判型・ページ数四六判・336ページ
  • ISBN9784799106693

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