「メタボリックシンドローム(メタボ)」が流行語になったのは2006年。その2年後から、お腹の周りを測るメタボチェックが健康診断などで行われるようになった。この10年の間に「メタボ=NG」の認識は定着した感があるが、肥満は相変わらず健康面で課題のようだ。
メタボチェックはウエストサイズが一定の基準(男性85センチ、女性90センチ)を超えていないかみるもので、オーバーならば「内臓脂肪過多」と判定される。複数の病気や異常が重なる「内臓脂肪過多症候群(メタボリックシンドローム)」手前の状態ということ。このほど刊行された『内臓脂肪を最速で落とす』(幻冬舎)によると、内臓脂肪は万病のもとともいえる存在であることが最近の研究でわかってきており、腹回りに脂肪が付いていると認知症になりやすく、その進行を早める可能性もあるという。
著者の奥田昌子さんは健診センターで20年間にわたる診療経験を持つ内科医。のべ20万人以上の人間ドックや健康診断を担当してきたという。その仕事のなかで気が付いたのは、健診のデータに異常があらわれる前に内臓脂肪の蓄積が始まること。しかしほとんどの人がそれを受け流してしまうという。
著者によると「日本人の体質がかかえる最大の弱点」は、やっかいなことに内臓脂肪がつきやすいこと。そして、蓄積されるだけではなく、ある種の物質を活発に分泌し、この物質が血圧や血糖値を上昇させる。その結果、動脈硬化を進行させ、血管で血液を固まらせ脳梗塞を招く。内臓脂肪から出る物質は脳の神経細胞を破壊し認知症につながることが明らかにされたという。だからメタボ判定を受けたらさっそく対策に考えなければならない。
内臓脂肪がつきやすことは「日本人の体質」なのだが、それも男性の方がより深刻だ。女性は、女性ホルモンであるエストロゲンに、内臓脂肪の分解を促進して皮下脂肪に変える作用があるため。そのため生活習慣病になる割合も低く、糖尿病の発症率は男性の半分ほどにとどまるという。
内臓脂肪が日本人の弱点であるのは、食生活の欧米化のスピードに日本人の体の変化がついていっていなことが原因とみられるという。日本で一般の市民が天ぷらなどの揚げ物を食べるようになったのは江戸時代のこと。だいたい18世紀後半とされ200年ほど前だ。「200年程度では体は変わりませんから、日本人が脂肪をうまく処理できないのも仕方ないといえそう」と著者。また、日本人は遺伝的な筋肉の質から、内臓脂肪を蓄えるようデザインされているが、時代が進んで食事に脂肪の多いものが増え蓄積過多の可能性が高まったとみられる。
だから脱メタボ、メタボ予防のために大切なのは、ふだんの食事や生活習慣の改善だ。本書では炭水化物や植物油、また「糖質ゼロ」などをめぐる迷信や、このところ盛んな高齢者への肉食のススメが招きそうな誤解を指摘。「食の欧米化」の負の面の真相が高カロリーや糖分の多さではなく食物繊維の減少などであることを明かし、「昔の日本人は内臓脂肪と無縁だった」として、かつての食生活への回帰を提案の一つに加えている。
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