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日本は世界の114位、これってホント?

8時間働けばふつうに暮らせる社会を

 日本人は働きすぎだといわれる。たぶんそうだろう。本書のタイトル、『8時間働けばふつうに暮らせる社会を』(学習の友社)という主張に賛同する人は多いのではないか。

 ただし本書は特定の運動体に寄った本である。いわゆる「全労連」系。実際に手に取ってみてそのことに気づいた。「安倍政権」の「働き方改革」に反対する立場が明確だ。本文中には「たたかい」という言葉が頻出する。そうした政治性はさておき、本書の中には興味深い「データ」がいくつかあった。先刻、ご承知の方々も多いかもしれないが、改めて列挙してみよう。

男女格差が激しい保険外交員

 まず、「男女の賃金格差」。ダボス会議で知られる世界経済フォーラムの報告書によると、日本は世界144国のなかで114位。ワーストに近い。厚生労働省所管の独立行政法人で労働に関する総合的な調査研究をしているJILPT(労働政策研究・研修機構)の調査では、男性を100とした場合の女性の賃金は72.2。欧米先進国は80台なので、たしかに差がある。

 業種別の数字は、厚労省の賃金構造基本調査で明らかになっている。それによると、男性を100とした場合、女性の調理師は73.0、ビル清掃員は78.0、保険外交員は54.2。幅広い分野で男女間の賃金格差がある。

 同じくJILPT調査で、フルタイム労働者を100とした場合の日本のパート労働者の賃金は58.0。イギリス、ドイツは72.1、フランスは86.6だから、これも差が激しい。賃金自体は、日本が高いのではないかと思っていたら、ILOの調査によると、これも厳しい。日本を100とすると、イタリア103、フランス115、米国127、ドイツ141、オーストラリア156、スイス187。西欧先進国の中では下位グループに属する。

看護師も働かされ過ぎ

 かつて入院した時に、看護師の労働時間が長く、夜勤も多いことに驚いたことがある。本書ではそれに関したデータもある。日本では16時間夜勤が合法化されているが、諸外国では13時間を超えるケースがほとんどない。

 しばしば話題になる最低賃金はどうか。OECDによると、日本の最低賃金は平均賃金を100とした場合35にとどまる。英国41、フランス50などよりも相当低い。

 というわけで本書には興味深い国際比較などの数字が次々と並ぶ。統計というのは全面的に信頼できるものではないかもしれないが、いずれも公的機関の調査なので、おおむね客観的な数字だと思われる。

 西欧諸国は日本に比べて失業率が高い、だから日本の経済は優れているという言説を聞く。それに関して、西欧経済通から、「あっちは失業手当の制度が手厚いんだ」という補足説明を受けて「なるほど」と思ったことがある。今回もいくつかの数字を見て、考えさせられるところがあった。

 本書の党派性は別として、「働くルールの国際比較」のデータを通して日本の実情を再認識しておくのも有意義かもしれない。もちろん、明日の生活が劇的に変わるわけではないが・・・。著者の筒井晴彦さんは1954年生まれ。労働者教育協会理事。

  • 書名 8時間働けばふつうに暮らせる社会を
  • サブタイトル働くルールの国際比較〈2〉
  • 監修・編集・著者名筒井晴彦
  • 出版社名学習の友社
  • 出版年月日2017年12月 1日
  • 定価本体1400円+税
  • 判型・ページ数A5判・171ページ
  • ISBN9784761710293
 

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