かつてタレントだった中山千夏さんの活動ぶりをどう例えたらいいだろうか? 名子役からスタート、声優、俳優、歌手、エッセイスト、テレビの司会者・・・。マルチタレント、「才女」ともてはやされた。70年に入って政治団体・革新自由連合の結成に参加し、代表に。1980年には、参院選の全国区に出馬、162万票を得て5位で当選した。1期6年務め、落選を機に政治から離れた。当選から三十余年たって69歳で出版したのが本書『活動報告』だ。
遅ればせながらの活動報告だ。ウーマンリブにかかわり政治にめざめた。議員になってからは精勤し、まじめに活動した。しかし、「政治的には毒にも薬にもならなかった」。無党派の結束にも失敗、タレント議員を輩出した全国区の廃止に伴い、選挙区から出馬したが落選。以後は市民運動にかかわる。住んでいる静岡県伊東市では「原子力いいんかい?@伊東」という活動をしている。
朝日新聞(2017年12月17日付)読書面のインタビューで「投票してくれた人たちへの報告という形なら、書けると思ったんです」と答えている。別のインタビューでは「どうして政治家になったのか、なぜ大変だったのか、自分でもよくわかっていないから書けない」と書くのがつらかったことを率直に認めている。
中山さんには、童話や絵本、ノンフィクション、さらには『新・古事記伝』(全三巻)なども含めて多種多様な著作がある。70年代から小説も書き始め、直木賞候補にも3度なった。本書は、子役時代を書いた『蝶々にエノケン』、テレビタレント時代を取り上げた『芸能人の帽子』に続いての三部作だという。本の表紙には80年参院選のポスターを使った。長い髪をたらした中山さんが、こちらを見つめている。選挙制度の変わった現在でも比例区にタレント議員はいるが、政党に所属しなければならない。無所属の全国区という政治的空間がもつ自由な雰囲気と多彩な人材はもう望むべくもない。中山さんの写真を見ながら、そんなことを思った。(BOOKウォッチ編集部)
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