夕刊紙「日刊ゲンダイ」の名物連載「オレのおふくろメシ」が本になった。2015年9月に始まり、今も続いている。執筆しているのは編集委員の峯田淳さん。芸能関連の取材が長く、本書『おふくろメシ』には、三遊亭小遊三、彦摩呂、氷川きよし、稲川淳二ら著名人80人が登場。母の思い出とともに、おふくろの味を再現したレシピが紹介されている。
連載のきっかけは、作家の故・渡辺淳一さんが「母親が作ったいくら丼をもう一度食べてみたい」と答えていた新聞記事だという。華やかな渡辺さんのイメージといくら丼の取り合わせが印象に残り、「おふくろメシ」という企画を思いついたそうだ。
食レポで知られる彦摩呂さんがあげているのが「長屋住まいのごちそうだった煮込みハンバーグ」。30年ぶりに作ってもらったら「台所にオレンジ色の夕日が差した鮮やかな光景が走馬灯のようによみがえって『思い出の宝石箱や!』って感じでした。これまで有名ホテルの一流シェフのおいしいハンバーグをいただいてきたけど、やはりおかんのは格別。記憶の中には味も刷り込まれているやなと思い、心がジーンとしました」と話している。
村西とおる監督には、母親が台所に立ってごはんを作っていた記憶がないという。極貧の中で両親は離婚。ひさしぶりに福島県いわき市に帰郷した折、母が作ってくれたのが「豚のモツとねぎの味噌いため」。「ねぎは斜めに長く切ってあって、出来上がりに七味を振って食べたら、甘辛くてシャキシャキして実にうまい。あの時、生まれて初めて『これが、かあちゃんの味か』と思って、感慨深かったね」と述べている。
どの料理にも作り方と写真がついている。簡単に作れるものが多いが、意外とバリエーションに富んでいる。家庭にはそれぞれの味があり、料理にまつわるさまざまな家族のエピソードが掘り起こされている。芸能人へのインタビュー経験が豊富な著者の面目躍如といったところだ。(BOOKウォッチ編集部)
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