イタリア北部、エミリア=ロマーニャ州モデナ市にあるレストラン「オステリア・フランチェスカーナ」は世界で最も予約がとりにくい店の一つという。2016年に初めて「世界一」の名店に選ばれるなど人気は高まる一方だ。オーナーシェフのマッシモ・ボットゥーラ氏は、革新的な料理で高い評価を得る一方、シェフの立場で「フードロス(食料廃棄)」の問題に取り組むなどの活動にも注目が集まっている。
本書は、料理ばかりでなく、料理を通じた文化的活動などでも"鉄人ぶり"を発揮しているボットゥーラ氏の半生記。イタリア在住の日本人ジャーナリストが長年にわたり取材を続け、イタリア料理の「破壊者」と呼ばれ、そののちに「創造者」になるまでの過程を描く。
「オステリア・フランチェスカーナ」を16年の「世界一」に選んだのは、英誌「レストラン」が創刊時の02年から毎年リストを作っている「世界のベストレストラン50」というレストランガイド。リストは、シェフやレストラン経営者、料理評論家ら約600人の投票で選ばれ構成されるという。
ボットゥーラ氏のフランチェスカーナは、13年と14年に3位、15年には2位にワンランクアップ。そして16年にトップを極めたもの。17年にはその座を米ニューヨークのフランス料理店「イレブン・マディソン・パーク」に譲ったが2位にとどまり人気に衰えはみられない。
「オステリア・フランチェスカーナ」があるモデナで生まれた育ったボットゥーラ氏は、幼いころから母や祖母らがキッチンに立つ姿をみて料理に興味を持つようになった。法律を学ぶ学生だった1986年、モデナ郊外で売りにだされていたトラットリアと呼ばれる飲食店を購入。法律の道は一時わきに置いて、トラットリアの営業に携わりながら北イタリア流の料理と伝統的フランス料理を合わせて学んで調理の基本を身に付けるための見習いシェフを始めたという。
そして95年に、フランチェスカーナをオープン。店のコンセプトは、現代美術やデザインを採り入れながら伝統と革新を合わせ持つ料理の実現であり、それは素材選びから調理、盛り付けなど、料理のあらゆるシーンで発揮され、味覚や視覚ばかりか五感を通じて、あるいは、それ以上の感覚で食べる者を魅了するという。本書では、ボットゥーラ氏の料理の魅力を最新12品のレシピを例に解説している。
ボットゥーラ氏はまた、フードロス問題の取り組みを主導するシェフとしても知られる。とくに15年のミラノ万博をとらえて立ち上げた「レフェットリオ」のプロジェクトは国際的に注目を集めた。「レフェットリオ」は「食堂」の意味。万博期間中に世界の一流シェフらによびかけ、食用に問題ないにもかかわらず廃棄の対象となった食品を集めて料理に仕立て、路上生活者や難民らに振る舞ったものだ。
同プロジェクトは、16年のブラジル・リオデジャネイロ五輪でも「レフェットリオ・ガストロモティーバ」として実施され、20年の東京五輪でも行われることが検討されているという。
著者の池田匡克さんは、編集者として出版社勤務を経て独立し、イタリア在住のジャーナリスト、写真家として活動。同国に関する紀行などを中心に著作を重ねている。ボットゥーラ氏の「オステリア・フランチェスカーナ」に長年にわたり通い、同氏の生い立ちから修業時代、シェフとして重ねた経験、そのほかの活動、独自の哲学を聞きだし本書にまとめた。
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