タイトルを見ると、「革新」もしくは「中道」だった人が「保守」になったのかと思うかもしれないが、著者の精神科医で評論家の和田秀樹さんは、もともと「保守」を自認していた人だ。
ゆとり教育反対運動をきっかけに保守論陣の仲間に入って、かれこれ20年。産経新聞の「正論」メンバーにも起用され、評論家の櫻井よしこさんら保守の論客とも対談本を出している。2004年には「正論新風賞」も受賞している。
それが今ごろなぜ『私の保守宣言』なのか。疑問に思う人がいるかもしれない。そのあたりの理由について和田さんは「はじめに」で、「自民党が圧勝し、『安倍一強』が続くから言いたいこと」と題して説明している。
・安倍内閣の批判をしたり、貧困問題に取り組んだりするため、左傾化したという批判を受けることがあります。
・保守同士の相互批判がほとんど見られなくなった気がしてなりません。
・実際・・・「もりかけ問題」について言及すると、保守でないような言われ方をするのです。
日本における「言論の自由度が下がってきた」という「国境なき記者団」などの調査結果が報じられていることを受けて、こう言う。
「私自身もテレビのコメンテーターをやっていたので痛感するのですが、言いたいことは言わせてもらえないし、もはやテレビの生放送の出演依頼は皆無になったという経験から、やはり言論の自由は損なわれているという実感はあります」。
こうした微妙な「違和感」が本書執筆のきっかけになっているようだ。「過去は何でもよかったという風には私は考えません」「日本の文化や考え方を守るというのも、戦前を美化するのか、歴史と古い文化があることを誇るのかで考え方は違ってくるでしょう」。そして本書では「保守の人間として、日本の過去のどこがよくて、どういう点を守るべきかを提言したいのです」と強調している。
したがって本書の内容は、「プロローグ」の「二分割ではない保守論を求めて」に集約されるといえそうだ。
「右でなければ左」「敵でなければ味方」「改革派か抵抗勢力か」――和田さんの専門分野の精神医学の世界では、こういう単純な考え方は「不適応思考」の一つと考えられているという。認知療法という心の治療法の対象とされるそうだ。二分割思考ではなく、「この部分は是認できるが、この部分は否定する」という是々非々の視点で保守論を考えてみたいとしている。
その意味では本書は、いわば「新・保守論」「保守再考論」であり、逆から見れば、「新・革新論」「革新再考論」に通じる一面も持つ、といえそうだ。
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