著者の平松類さんはメディアにもしばしば登場している眼科医。スマホ老眼やドライアイなど目のトラブルについての分かりやすい解説が好評だ。眼科には高齢の外来患者が多く、そのため、高齢者の現実を知ろうと「海外の最新論文・国内の詳細なデータや文献を読みあさってきた」。それで分かったことは、近年しばしば問題にされる高齢者の困った行動の数々は、認知症などによるものではなく、老化による体の変化が原因であるということ。
本書では、「老化の正体」と、それに対して高齢者がすべきこと、周囲に求められる態度などについて、医学的立場から具体的に説明されている。
たとえば信号が赤なのに通りを横断する高齢者がみられるが、それも加齢による体の変化が原因になっているという。まぶた下がる、腰が曲がるなどで上方の信号機が見えない、あるいは、転びやすいので足元ばかり見て歩いている、また、歩くスピードが遅くなり横断しきれないうちに信号が変わってしまう――などが考えられる。高齢化が進むこれからは横断歩道の信号を感知式にすることが求められるという。
家族などの周囲の人たちにとって、対処に戸惑うことが多いことの一つに「難聴」があげられる。ケースによっては「都合の悪いことだけ聞こえないふりをする」などと受け取られ、トラブルの元となる。しかしほとんどの場合、医学的はきちんと説明できるのがほとんどだという。
「姑が嫁の話だけ聞かない」という訴えを調べてみると、その背景には「嫁の声に秘密が隠されていた」ことが分かったという。だれでも加齢により、程度の差はあるが、一部の音域が聞こえにくくなり、高い音、特に若い女性の声が聞きとりにくくなるのだ。だから、高齢者との会話では、このことを理解してイライラせずに、低い声でゆっくり話すことが求められるという。
「頑固になった」「わがままで意地悪になった」などと、高齢者についての不満を耳にすることが多くなっており、こうした次元での高齢化対策は、卑近な問題であるだけに、われわれ一人ひとりが心がけることが重要だ。本書では「赤信号横断」や「難聴」のほか、同じ話の繰り返しや、ネガティブなひがみ発言など「老人のよくある困った行動」を16例を取り上げ、その原因と対処法を紹介している。家族や介護にあたる人に加え、高齢者を相手にする機会が多い営業職や接客業の人にも役立つ一冊。
読売新聞(2017年11月12日付)で書評家の東えり子さんは「聞こえないふり突然の激怒、同じ話の繰り返しや味覚の異常など、身体の仕組の細部を知ることで本人も家族も幸せに過ごせる」と述べる。
突き放した印象を与えるタイトルで、著者自身も「言い方はわるいですが...」と述べている。しかし、老化はだれでも通る道であり、自らの"トリセツ"でもある。
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