「四大卒、会社員、妻子あり」――痴漢で捕まる男たちの平均像だという。意外に感じる人も多いのではないか。
本書『男が痴漢になる理由』は痴漢について徹底的に分析し、撲滅をめざした専門書だ。著者の斉藤章佳さんは精神保健福祉士。都内のクリニックで性犯罪者の再犯防止に取り組む。これまでに1000人以上の「更生」に関わったという。
「痴漢は女性に相手にされない、さみしい男である」これら痴漢についての「俗説」は誤解だという。逮捕者には社会的地位のある人が少なくない。犯行時に加害者が性的に興奮しているとは限らず、被害者の女性が喜んでいると思って行為に及ぶ。あるいは「弱者」である被害者を苛めることで「勝利感」を味わっている。捕まっても反省も贖罪もないから、再犯率が高い。
「性欲をコントロールできないから、痴漢に走る」
「肌を露出した女性は、痴漢に狙われやすい」
「電車内に防犯カメラを搭載すれば、痴漢は減る」
座間の事件のように、殺人を繰り返す人はまれだが、泥棒はしばしば繰り返す、特に万引きやスリは繰り返す、と聞いたことがある。だから「盗癖」と言うコトバがある。
これにならうと、「痴漢は繰り返す」。すなわち「痴漢癖」。著者によれば、痴漢は一種の依存症=ビョーキだという。だから適切な治療が必要だ。
(中見出し)全ての男性が潜在的な加害者10月29日の東京新聞読書面が本書を取り上げている。それによると、痴漢の動機は過剰な性欲ではなく、加害者の抱える「ストレスへの対処」なのだという。仕事のプレッシャーが高まると、痴漢することでストレスを発散する例が少なくないそうだ。したがって、再犯防止には、適切なストレス対処法を身につけさせることが有効だが、社会的に、そのことが認識されていない。ゆえに再犯者が後を絶たない。「全ての男性が潜在的に加害者になる可能性がある」という著者の言葉は、自分のことを「痴漢とは縁のない生真面目なサラリーマン」と思っている人にとっても他人事ではない。
満員の通勤電車が走り、「痴漢大国」ともいわれるニッポン。管理職になると、自分が加害者にならなくても、部下が警察の御厄介になり、「もらい下げ」で呼ばれることがありうる。それほど痴漢犯罪は身近になっている。大きな職場では様々な管理職研修や社員研修があるが、これからは斉藤さんによる「痴漢防止研修」が必須になるかもしれない。
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