ビートたけし書き下ろしの純愛小説『アナログ』が5刷10万3千部と好調だ。朝日新聞(10月29日付)読書面のコラム「売れてる本」で阿部嘉昭氏(評論家・北海道大学准教授)が取り上げ、公開中の「映画『アウトレイジ』シリーズの惹句『全員悪人』が本作では『全員善人』に変貌する」と、うまい表現をしている。
主人公の悟は、設計事務所のデザイナー。ある日東京・広尾の喫茶店で、みゆきという女性と出会う。互いに連絡先は聞かず、木曜日に店で会えればいいという淡い付き合いが始まる。電話番号もメールアドレスも分からず、週1回店で会うという関係性が『アナログ』というタイトルに象徴されている。
もう一つ、彼は仕事でのコンピューターの利用は最小限にとどめている。デジタル画像は使わず、手作りの模型で対応していた。時間はかかるが、出来栄えは見事で、クライアントの信頼も高い。大阪出張などで忙しくなった悟だが、木曜のデートは大事にしていた。そんなある日、転機が訪れる。
小説はほとんど悟の行動の描写に費やされ、みゆきの素性は明らかにされない。ときおり挟み込まれる悟の友人二人のばかばかしい会話が漫才のようでもある。映画のシナリオを読むような簡潔な文体で物語は進行してゆく。
結びは「また、コンピューターに向かった」という一文で終わる。阿部氏は「実はアナログとデジタルの調和こそが志向されている」と本作のテーマをとらえている。たしかにデジタルという環境があればこそ、主人公らの未来は明るいのかもしれない。妙に「アナログ」にこだわらず、現実的かつハッピーな物語を構築した、著者の力量に感服した。ぜひ北野武監督のフィルムで見てみたい。
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