「別府フロマラソン」は、別府大学文学部講師を務める地元在住の作家、澤西祐典さんによる「痛快ユーモア小説」。別府温泉の別府八湯から極秘に指定された八つの温泉を探し当て、それらを"湯破"することがルールの「別府フロマラソン」が舞台になっている。これに優勝すると願いが一つだけかなうといい、別府大学3年で、温泉研究会で活動する明礬(みょうばん)湯太郎らが挑戦。過酷な道のりを克服しゴールするが、そこには既に"完湯"したものがいた...。
澤西さんは兵庫県出身で、京都大学大学院に在学中の11年に「フラミンゴの村」で、すばる文学賞受賞。15年に公募で別府大学講師に就いた。着任早々、澤西さんは「八十八湯のスタンプラリー」を"完湯"して第7037代別府八湯温泉道名人になるなど、別府の貴重な資源であり財産である温泉を知ろうとするのだが、地元の人にとっては当たり前すぎる存在なため関心が盛り上がらず、発信力が弱さを感じていた。
週刊ポスト(2017年9月29日号)の「著者に訊け!」で澤西さんはまた「別府が登場する近代文学の類も一通り調べてみたが、ここまで多種多様な温泉があちこちにあるとは誰も書いていない」と嘆き、それならば自分がと考えて、本書執筆の動機になったという。
別府では17年7月29日から3日間、遊園地と温泉施設を合体させたイベント「湯~園地」を実施。ジェットコースターなどアトラクション装置の内部に温泉の湯をはり、来場者はバスタオル一枚でそれらに乗り込む。イベントを主導した長野恭紘市長自身が「常軌を逸したイベント」とあきれるほどだった。本書は「前代未聞の"湯~園地"実現記念」をうたう。
湯太郎らのマラソンのもようは、実在の場所や施設を登場させながら描かれる。巻末には、温泉街や観光施設などについて、温泉愛好家らによる「別府八湯温泉道名人会」や別府大の学生が解説や感想を述べたセクションがあり、カバー裏は参照用に別府エリアマップも。フィクションの小説を楽しみながら、観光ガイドとしてもつかえる。
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