サントリーの創業者、鳥井信治郎の生涯を追った日本経済新聞の連載小説が上下2巻となって刊行された。著者の伊集院静氏が企業人を主役にした小説を執筆するのは初めてだった。その動機に、サントリーの企業としての母体に「陰徳」の精神が息づいていることを挙げる。信治郎の半生記『道しるべ』にはウイスキーを造り上げたことは1行も書いていないという。
信治郎は大阪の船場の両替商の次男に生まれ、薬種問屋に丁稚奉公に入った。店ではウイスキーも輸入して扱っていたが、店主は葡萄酒の製造を思いつく。当時の葡萄酒は合成酒だった。店主と二人で葡萄酒作りに励むが......。
国産ウイスキーの誕生と言えば、NHKテレビの朝ドラマの影響もあり、ニッカの竹鶴政孝の名前が浮かぶが、伊集院氏は「竹鶴も自伝で、信治郎がいなかったら日本のウイスキーの歴史は何十年も遅れただろうと書いている」と話し、信治郎の功績を挙げる。
小説はビールのシェアが15%を達成したところで終わっている。参入してもほとんどシェアが取れなかった苦難の時代が長かった。目標は30%だという。サントリーのビールを愛飲している者としては、本書を読み、さらに製品に愛着がわいてきた。
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