介護の体験記や介護をテーマにした小説はいろいろあるが、独身の50男の体験記となると珍しいのでは。しかも著者の松浦晋也さんは科学技術が専門のフリーライター。パニックになりながらも、どこか客観的に自分を見つめているところがある。
ある日、同居する母親が「預金通帳が見つからない」と言い出したのが始まりだった。それからは年金を引き落としたのを忘れたり、通販にはまり余計なものを買ったり、それを忘れたり......。そして認知症になったことを認めず、松浦さんと言い争う。
「介護者の体感としては一定の期間が過ぎるとガクンと悪化します。そのガクンとくる期間を一章分として、各章で自分の体験、医療についてや、役立った情報などをかたまりとして入れるように意識しました」と話す。
親と離れてくらす50代、60代の男性は少なくない。独身、既婚を問わず、老親の衰えは気になるものだ。出来るだけ間隔をおかずに様子を見に行くことが肝要なようだ。
著者はフリーライターゆえに、介護の体験そのものがネタになり、収入につながったが、こう警告する。「介護を家族間にと主張する政治家もいますが、実際に介護のために家庭に入れば、その人の収入は途絶えます。日本のGDPもまた、それだけシュリンクしていく。将来的にみると現実的ではないですね」
最後は母親を施設に入れるが、ペーソスあり、実用情報ありの異色の介護体験記だ。
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