いま、クラシック界で注目を集める女性ヴァイオリニストがいる。
今年6月に発売された日本でのデビューアルバム『ヴァイオリン愛奏曲集』がBillboard JAPAN Top Classical Albumsで2位以下を大きく引き離して1位となった、若林暢(のぶ)さん。
ただし、彼女はもうこの世にはいない。昨年6月、惜しまれながら58歳の若さで亡くなった。
若林さんは、東京藝術大学、同大学院を経て、ジュリアード音楽院を卒業。ニューヨーク国際芸術家コンクール優勝、ヴィニャフスキコンクール2位、その他、モントリオール国際コンクールなど多数の入賞歴がある。1987年のカーネギーホールでのデビュー・リサイタルは、ニューヨークタイムズ紙でも高い評価を受け、世界各地で演奏活動を行った。
世界が認めた才能ながら、なかなか日本で広く知られることがなかったというのが不思議だが、亡くなって1年、遺された演奏を通して人々を惹きつけている。
本書は、若林さんの、ジュリアード音楽院の博士論文。クラシック音楽で登場することの多い「悪魔」が楽曲上でどのように表現されているか、作品の背景や手法・様式の分析を通して浮き彫りにしたもの。
こう聞くと、門外漢にはさっぱりわからないのでは、と思ってしまうが、東京藝大学長でヴァイオリニストの澤和樹氏が序文に「学術論文を読んでいるというよりは、劇的な文学作品にいつの間にか引き込まれていくような感覚」と言うように、「クラシック音楽」ということを強く意識しなくても、面白く読める。
バッハからストラヴィンスキーまで、クラシックの名曲がとり上げられているので、楽曲を聴きながら読むのも楽しいかもしれない。
若林さんは、若手の育成にも熱心であったという。本書も「この研究が演奏家にインスピレーションを与え、音楽による悪魔の表現をより深く理解する助けになれば」との思いが詰まった一冊。譜例も多く、クラシック音楽を学ぶ人には特にお勧めしたい。
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