最初に出版されてからほぼ40年が経過したが、アマゾンの「岩波新書の売れ筋ランキング」(7月12日)では「4位」にランクされている。時代が変わっても、英語学習者にとっては欠かせぬ副読本だ。著者は近代日本文学を専攻する米国人学者。日本人の英語は「ここがヘン」という指摘が並ぶ。本書を手にして「決してネイティブのように英語はマスターできない...」と悟る一方、ヘンなところを直せばある程度はいけるかも、と思わせる精神安定剤的役割も担っている。
初版の出版時は「ネット以前」だったが、ネット時代なってからは、さまざまな書評や感想が出ている。そのほとんどは、本書に接して英語に対する認識を新たにした――というものだ。通販サイトなどでは「目からうろこ」のキャッチも目にする。
その例としてしばしば引用されるのは「chicken」と「a chicken」の違いを述べた部分だ。著者に米国留学中の日本人の友人から手紙が届く。そのなかに「I ate a chicken」という表現があり、著者は複雑な気持ちになったという。なぜか。「a chicken」が意味するのは「ある1羽の鶏」であって「鶏肉を食べた」とするには「chicken」が適当だから。
「学校で習ったかなあ、それ」と、読者は自分の「英語力」が不安になる。文法は一生懸命やったはずなのに...。「chicken」をめぐっての不定冠詞に続き、定冠詞、前置詞、時制、関係詞、態など、著者の「日本人の英語」についての指摘が続く。読み進める間に、次第に「この本に習えばイケるんじゃないか」と思えるようになってくるから不思議だ。それは、ところどころで著者が吐露する日本語学習の経験談が共感を呼ぶからかもしれない。
「次の日本語をふと耳にし驚いたことがある」と著者。それは「あの人は思いやりがなさすぎますよ」というもので、なぜかというと「『ない』は『何もない』という意味ではないのか。『ゼロ』ではないか。『なさ』には度合いがあるか。もし何か『少なすぎる』というならわかるが、『なさすぎる』なんて、どうしても私に納得できないことである。英語は決して非論理的な言い方を許さない」
この経験から「まず英語の意味的カテゴリーをできるだけ頭から追い出さなければならないことがわかった」という。英語の学習者の多くはおそらく「日本語の意味的カテゴリーをできるだけ頭から追い出さなければならないこと」を分かっている。それを加速させてくれることが、長期にわたりベストセラーを維持している理由のようだ。
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