1976年6月26日、「世紀の一戦」と銘打たれた、モハメド・アリとアントニオ猪木の試合が東京の日本武道館で行われた。当時の散々な評価の一方で、現代の「総合格闘技」に道を開いた歴史的一戦という位置づけもあり、試合から40年以上がたち、やはり「世紀の一戦」だったと思い出す人が多いのではなかろうか。それはあくまでわれわれ日本側から見方。40年後にやっと、米国からの評価が届いた。
アリは当時、ボクシングのWBA・WBC統一世界王者。猪木との試合の2年前に、不利とみられていたジョージ・フォアマンとの試合でKO勝ちし王座に復帰。この試合は「キンシャサの奇跡」と呼ばれる。一方、猪木は新日本プロレスを設立して4年目、異種格闘技戦の挑戦を続けていたが、当時世界的にはアリの知名度にはまったくかなわなかった。
そのためか、この試合のあとに出された説明や解説は猪木側からのものばかりで、評者の国際日本文化研究センター教授、井上章一さんは「アリ側の立場から、あの一戦を解説するこころみは、皆無であった」と指摘する。
本書はその空白を埋める役割を果たす。井上さんは「この本には、いろんなことをおしえられた」という。猪木はイスラム教に改宗しており、ムスリム名を持つ。「猪木がイスラム世界へあゆみよった背景にアリがいたろうことも、なるほどと思わされた」と、収穫の一つを挙げた。
本書のサブタイトルは「アメリカから見た世界格闘史の特異点」。猪木アリ戦にとどまらず「ボクサーVSレスラーの長い歴史」から説きおこし「世紀の茶番」とも揶揄された、あの戦いの意味の解析に努めている。
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