トラベルミステリーの創始者はアガサ・クリスティーだと著者はいう。『オリエント急行殺人事件』には、大英帝国の残影がまだ残る戦間期の世相と歴史、地理が反映しているというのだ。
評者の土方正志氏(出版社「荒蝦夷」代表)は「日本なら、松本清張や西村京太郎のトラベルミステリー」を例に挙げている。
松本の『点と線』には東京と九州を結ぶ寝台特急列車が、重要な舞台装置として登場する。東海道新幹線、山陽新幹線、九州新幹線の開通とその後のブルートレインの廃止は、その作品空間が亡くなったことを意味している。
英国はいまEUから離脱しようとしている。ミステリーにも影響は出るのだろうか? そんなことをふと考えた。(BOOKウォッチ編集部JW)