日本の経済や政治などについて著者が55の質問に答えるという作りの本。著者は元財務省官僚で現在は嘉悦大学教授。自身について「経済学者」と紹介されることが多いが、「数量分析家」または「データ解析家」と定義する。ロジカルに物事を考えることの重要さを説く。
たとえば「日本経済の低成長は、やっぱり少子化が原因なのでは?」という質問には「それを証明するデータは一切なし!以上!」と答える。「立証できないものに頭を使うのは、はっきり言って能力と資源の無駄遣い以外の何ものでもない」と言い切る。
ばくぜんとした疑問にもすっきり答えてくれる。「ヤマト運輸の運賃値上げで、私たちの生活はさらに大変になりそうな気がします」という質問には「これこそ経済成長のあるべき姿。回り回ってみんなが潤うから心配なし!」と答える。「マクロ面から見たらインフレ分が従業員の給与に上乗せされ、それが消費に回るのだから、結果としてみんなが潤うことになる」と説明する。
ロジカルに考えるということ
著者はロジカル(論理的)に物事を考えることについて、こう書いている。「物事を考える際には、『場合分け』といって、対象となる仕組みや相関関係、因果関係など、独立した座標を何本も立てて、それらを検討、総合してロジカルな思考を組み立てていく必要がある」
場合分けと時系列を意識することによって、物事はクリアーに見えてくるということだ。
著者は自身について「正直言って私はイデオロギーなんていう面倒なものとは一切無縁だ」という。データに基づいてロジカルに考えた結論を述べるだけという著者の姿勢は学ぶところは大きい。日本の将来について、なんとなく不安に思っている人に薦めたい。読めば、物事の見方も変わってくるはずだ。
(BOOKウォッチ編集部JW)