タモリのNHKの紀行番組「ぶらタモリ」の評判がいい。最近はテレビだけでなく、本も出版され、よく売れている。番組の中でタモリがこだわるのは、地形の高低や坂、川、暗渠、水辺、地質などである。現在は全国各地の都市に出張しているが、以前は彼の行動の制約から東京都内に限られていた。そして気づかされたのは、東京の地形の多彩さ・複雑さである。「均質なコンクリートジャングル」という従来のイメージは、崩された。 コンクリートをひとかわめくれば、そこには縄文以来(いやもっと以前から)かたちづくられてきた海と川と谷が入り組んだ複雑な地形とひとびとの営みの跡があるのだ。 こうした東京観が出てきた背景に、本書「アースダイバー」があるのではないか。 「縄文地図を持って東京を散策すると、見慣れたはずのこの都市の相貌が一変していくように感じられるから不思議だった。どうして渋谷や秋葉原はこんなにラジカルな人間性の変容を許容するような街に成長してしまったのか、猥雑な部分を抱えながら新宿がこれほどのバランス感覚を保ちつづけていられるのはなぜか」と中沢は書く。縄文地図を持って、中沢が東京を歩いたレポートが本書である。
個々の場所の記述は本書を読んでもらうことにして、圧巻なのは末尾の付録の地図だ。洪積台地と沖積低地が複雑に入り組んだ東京の地図は、まるで無数の血管がひしめく「脳」のように見えることだ。そして旧石器遺跡、縄文遺跡、弥生遺跡、古墳、神社、墓地があちこちに点在する。それぞれにさまざまな「物語」があるのだろう。 縄文人たちは、谷や台地をあるき、くらしていた。いま私たちは鉄道や自動車で移動し、地形のことはあまり意識することなく生活している。歩いて、東京という街を移動すると、見えなかったものが見えてくるのではないだろうか。巻末の地図を持って歩いてみよう。知らなかった東京を見たい、そんな気持ちになった。
当サイトご覧の皆様!
おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!
広告掲載をお考えの皆様!
BOOKウォッチで
「ホン」「モノ」「コト」の
PRしてみませんか?