17世紀、絵画の黄金時代を代表するオランダの画家フェルメールが創りだした、やわらかな光と静謐の世界。
フェルメールの絵画は、日本でも高い人気を集め、多くの人々の心を強くとらえて離しません。
そんなフェルメールの代表作であり、日本初となる「真珠の首飾りの少女」の公開でも話題の「ベルリン国立美術館展」、現在は九州国立博物館での好評開催中です(12月2日まで)。
フェルメールの国際的評価が高まっていた20世紀前半、その裏側で第二次世界大戦をきっかけに発覚した驚くべき贋作事件があったことをご存じでしょうか。
1945年、ナチス・ドイツが占領国から略奪した名画のなかから、フェルメールの作品が押収されました。
徹底した出所調査の結果、その押収された作品ばかりか、「フェルメール作」としてオランダの有名美術館などに所蔵されていたいくつもの作品が、実は20世紀に描かれた贋作だったことが判明。
そして、その捜査線上に一人の男が浮かび上がります。
その男の名はハン・ファン・メーヘレン。
オランダの至宝を敵国に売り渡した国家反逆罪、すなわち死刑を突きつけられた彼は、苦悩のすえ、こう告白するのです。
「私が、全部、書いたんだ」
芸術家として挫折をおぼえ、そして美術贋作者として成功を収め栄光をつかんだ彼の完璧な作品には、5000万ドルという値と世界中の賞賛が与えられていました。
その完璧さゆえに、罪を告白したときでさえ誰一人として信じようとせず、法廷で自ら贋作を描いてみせなければならなかったほど。
なぜ彼の贋作は、美術専門家も、そしてナチスをも欺くことかできたのか?
膨大な資料を踏まえ、スピードとスリルに満ちた文体で甦る、歴史上最も有名な贋作者ハン・ファン・メーヘレンの栄光と挫折の生涯。
本書は、フェルメール作品のみならず、芸術に対する新しい見方をもたらしてくれるのではないでしょうか。
(※本書は2007年9月刊行『私はフェルメール 20世紀最大の贋作事件』の改装新版です)
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フランク・ウイン『フェルメールになれなかった男 20世紀最大の贋作事件』■フェルメール「真珠の首飾りの少女」in ベルリン国立美術館展 公式サイト
http://www.berlin2012.jp/fukuoka/書名:フェルメールになれなかった男 20世紀最大の贋作事件
著者:フランク・ウイン
訳者:小林頼子・池田みゆき
定価:1,680円(税込)