「『学ぶ』と『遊ぶ』の垣根がなくなったと思う」……1月に販売された書籍『伝説の灘校教師が教える 一生役立つ学ぶ力』では、このような学生の声が紹介されています。
本書の著者である橋本武氏はことしの7月で100歳になる人物。昨年の6月には27年ぶりに、自身が50年間教壇に立っていた灘校にて特別授業を実施しました。冒頭の言葉は、その授業に参加した学生の一人が口にしたものです。 「灘校の教師」というと少しでも多くの知識や受験テクニックを生徒に叩き込むような人物、などと思ってしまうかもしれませんが、橋本氏の教育方法はそれとはまったく異なります。
現役時代に行なっていた授業は、中勘助の小説『銀の匙』を3年間かけて読み込む、というもの。
この授業方法は、「スローリーディング」の実践として、各メディアで紹介されました。
本書において橋本氏は、「横道にそれる」ことの大切さを説いています。
たとえば、『銀の匙』を読み込む授業の際にも、小説内に出てくる駄菓子がどのようなものなのかを実際に知ってもらうために、それを授業中に食べてみるという「試食会」をしたこともあるそうです。
そのように、興味のあることを自発的にいろいろと調べていくうちに、「学ぶ」と「遊ぶ」の垣根が自然と取り払われてくる、という訳です。 橋本氏自身が、そのような「横道にそれる」生きかたをしてきた人です。いままでにのめり込んできた趣味も、カメラ、能、国内旅行といったものからカエルグッズ集め、宝塚歌劇団…などなど、実にさまざま。100歳を目前にしても自分の身の回りのことは基本的に自分で行なっている橋本氏の力強さの秘訣は、そのような飽くなき好奇心にあるのかも知れません。
「学ぶ力」を身につけたいと考えている学生や社会人のほか、受験を控えている子供を持つ親の方々にもおすすめの一冊です。

書名:伝説の灘校教師が教える 一生役立つ 学ぶ力
著者:橋本 武
発売日:2012年1月26日
定価:1365円(税込)