福島第一原発の事故以来、放射線被曝に関する記事が、テレビ、新聞、雑誌には溢れかえり、被曝を心配する多くの人たちが、ガイガーカウンター片手に放射線量に一喜一憂する日々が続いています。
しかし、さまざまな記事を読めば読むほど、真実がどこにあるのかわからなくなる方々も多いのではないでしょうか。ある記事では「政府は事実を隠している」「被曝の危険性は相当なものだ」、別の記事では「心配し過ぎだ」……。反原発派と推進派の論争も、もはやイデオロギー論争の様相で混迷は深まるばかりです。
放射線を大量に浴びたら人はどうなるのか。
『朽ちていった命』は、みなさんが最も知りたいことを、知っておくべきことを記した一冊です。
1999年9月に起きた茨城県東海村での臨界事故。核燃料の加工作業中に大量の放射線を浴びた患者を救うべく、83日間にわたる壮絶な闘いがはじまります──。「生命の設計図」である染色体が砕け散り、再生をやめ次第に朽ちていく体。前例なき治療を続ける医療スタッフの苦悩。そのありのままの事実を目の前に突きつけることで、人知及ばぬ放射線の恐ろしさを問う渾身のドキュメントです。
圧倒的な事実の前には、イデオロギー論争などは霞んでしまいます。読後は、きっと誰もが、ノンフィクション作家の柳田邦男さんがお持ちになった思いと同じ思いを抱かれることでしょう。
私は大量の放射線が人間にもたらすもについて、
わかったつもりになっていた。
そのわかったつもりを打ち砕かれたのが、本書に
よってだった。
──柳田邦男──
『朽ちていった命 被曝治療83日間の記録』 関連情報はこちら朽ちていった命
被曝治療83日間の記録
NHK「東海村臨界事故」取材班
定価 460円 (新潮文庫)
2006年10月1日発売
新潮社