2011年3月11日、東北地方を代表するブロック紙「河北新報」も大きな被害を受けた。
本社と各支局や販売店との連絡・通信網が途絶、本社編集局の組版サーバーが倒壊し紙面づくりができなくなった。できる限りの手段で社員や販売店員の安否を確認し、友好紙「新潟日報」の協力を得て号外を発行。翌朝ヘリコプターで太平洋岸に向かった記者、カメラマンは凄絶な光景を目にする。ビルの屋上から救助を求めて手を振る被災者に、あるカメラマンは「ごめんなさい、僕たちは撮ることしかできない」とむせび泣いた。県庁から飛び込んだ「死者一万人以上」の原稿に、整理部記者は「死者」ではなく「犠牲者」という見出しをつける。避難所に新聞を届けた社員や販売店員は、被災者が新聞に求めるものを肌身で知ることになる。そんな中から「避難所いま」「ふんばる」などの企画も生まれた。
全社員、販売店などの関係者の行動記録や取材をもとに、1897年創刊、「東北振興」を社是とする地
元紙が未曾有の天災をいかに受け止め、報道したのかを克明に綴ったドキュメント。「河北新報」の震災報道は、2011年度新聞協会賞、菊池寛賞を受賞した。
書名:河北新報のいちばん長い日 震災下の地元紙
著者:河北新報社
発売日:2011年10月27日
定価:1,400円(税込)