「難聴」や「ろう」といった言葉はよく耳にするし、聴覚障がいの存在自体は広く知られている。しかし、それぞれの言葉が具体的に何を指しているか、と問われると答えられない人は多いはずだ。
2023年4月26日に発売されたインフルエンサー・難聴うさぎさんの初のエッセイ本『音のない世界でコミュ力を磨く』(KADOKAWA)では、自身も先天性の聴覚障がい3級・感音性難聴である著者が、この聴覚障がいのさまざまなバリエーションについて説明している。
聴覚障がいとは、声や音が聞こえない、または聞こえにくいことを意味する。「ろう」や「難聴」はともに聴覚障がいを表す言葉で、耳が聞こえない場合は「ろう」、聞こえにくい場合は 「難聴」と呼ばれる。
一般的には、補聴器などをつけても音声が判別できない場合を「ろう者」、わずかにある聴力を活用してある程度聞き取れる人を「難聴者」というが、捉え方のもうひとつのパターンとして、手話を第一言語もしくは主なコミュニケーション手段とする人を「ろう者」、音声言語が中心で手話を使わないか補助程度の人を「難聴者」ということもある。
耳が聞こえない理由は、お母さんのお腹にいる時にお母さんが病気になった、飲んだ薬に副作用があった、赤ちゃんの時に高熱が出た、事故にあった、など様々。難聴うさぎさんの場合は、はっきりとした原因はわからなかったという。
また、聴覚情報処理障がい (APD) というものもある。これは、聴力は正常であるにもかかわらず、聞いた言葉の内容が理解しづらい、「聞こえているのに聞き取れない」状態のこと。 聞き返しや聞き間違いが多かったり、騒がしい環境で相手の話すことが理解しづらくなったりする場合、「難聴」と混同されやすいという。
聴覚障がいは2級~6級(5級はない)まであり、2級が最も重く、両耳の聴力レベルが100デシベル以上とされる。 デシベルが高いほど、耳は聞こえにくい。
2級 両耳の聴力レベルがそれぞれ100デシベル以上のもの (両耳全ろう)
3級 両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの (耳介に接しなければ大声語を理解し得ないもの)
4級①両耳の聴力レベルがそれぞれ80デシベル以上のもの (耳介に接しなければ話声語を理解し得ないもの)
②両耳による普通話声の最良の語音明瞭度が50パーセント以下のもの
6級①両耳の聴力レベルが70デシベル以上のもの(40センチメートル以上の距離で発声された会話語を理解し得ないもの)
②一側耳の聴力レベルが90デシベル以上、 他側耳の聴力レベルが50デシベル以上のもの
補聴器も等級によって使うものが異なり、6級・4級では補聴器をつけていない人もいる。実際、難聴うさぎさんのマネージャーは6級だが、補聴器はつけていないという(2級でも補聴器が苦手でつけていない人もいる)。
また、6級なら、聞き取れない場合はあっても電話での会話はできるし、手話でのコミュニケーションもできる。3級になると、手話ができる人とできない人は半分ずつほどで、使わない人は読唇術でコミュニケーションを取っているが、2級で手話ができない人はほとんど見たことがないという。
難聴うさぎさんの実感では、3級より上になると電話は難しく、6級の人はカラオケに行っても音程がクリアで合っている。また、発音も3級の人の方が2級の人よりもクリアな場合が多い。
このように、一口に聴覚障がいといっても様々な聞こえ方があるのだ。
本書では、YouTuber、会社経営者、タレントとして幅広く活動し、SNS総フォロワー55万人を超える著者が、障がいについて葛藤した幼少期や、インフルエンサーになるまでの半生を、多様なエピソードとともに語っている。
■難聴うさぎさんプロフィール
なんちょう・うさぎ/先天性の聴覚障がい3級・感音性難聴。生まれつき耳が聞こえず、コミュニケーションは補聴器から伝わる振動と読唇術にて行う。中学3年生の時に自分の障がいと向き合った作文が、人権作文コンテストの島根県大会最優秀賞に選ばれ、全国大会で法務省人権擁護局長賞を受賞。住宅メーカーや手話ラウンジでの勤務を経験し、現在は耳についての発信をYouTubeやTikTokなどで行うインフルエンサーに。SNS総フォロワー数は約55万人(2023年3月現在)。様々な障がいのある人とも協力し、障がいのことをもっと世の中に伝える活動を行っている。
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